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日々樹渉__おやすみ、私のアストロ。 ページ4

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『 …わたしね、いつか星になるのよ 』



それが彼女の口癖だった。
静かな屋上の片隅で星に手を伸ばしながら話し出す。




『 人類は月に行けるようになったんだから、いつか私の手も星に届く日が来ると思うの 』




彼女の手首に巻かれた包帯と頬に貼られた湿布、他にも見えない所に彼女の傷は隠されているのだろう。彼女は何も言わないけれどいつも私が包帯を巻く度に泣きそうな顔をしていた。



『 ね、わたる。どうやったら宇宙に行けると思う? 』



「 …宇宙飛行士になる、とかでしょうか? 」



その返事が正解だったのか、彼女は答えてくれなかった。宇宙に想いを馳せる時の彼女の目は何よりも輝いてそれだけで十分だった。

手品も魔法も彼女の目には映らなかった。唯一、宇宙という広大な存在だけが映っていた。だから彼女はいつだって星に手を伸ばす。それが彼女の願いだった。




『 わたし、いつか星になるの。…でも、神様は私の事が嫌いみたいだから、わたしは自分の力で宇宙に行くの 』




彼女の願いを彼女は自分の手で掴んだ。神様なんて不確かな存在を瞳に映すのは辞めたらしい。

常に星を映してきらきら輝いていた目を閉じたまま、彼女はもう目を覚まさない。彼女を写していた私も目を閉じた。



私にとって宇宙よりも広大な存在だった彼女はどんな魔法を使ったのだろう。星のように輝くものを見るだけで思い出す。未だ瞼の裏で輝く私だけの星。



今日も明日も、また次の日も。

おやすみ、私の宇宙飛行士(アストロ)





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作者名:碧依 ねむ | 作成日時:2020年2月21日 0時

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