リングの誕生 ページ19
「ヴィオラ⁉」
「アラウディ……僕、僕は……」
ボロボロの狼達を腕に抱え、涙を流すヴィオラ。
神域で待っていたアラウディは、ヴィオラの瞳を見て凍りつく。
「人間が……人間がこの子達を……自分勝手な願いを叶えるためだけに……僕の家族を‼」
殺意を滲ませ、憎しみを込めた紫の瞳を鋭く光らせる。
「僕が……僕がこの手で……彼らの仇を……」
「ヴィオラ‼」
復讐に取り憑かれかけるヴィオラの華奢な身体を、アラウディは強く抱きしめる。
「……彼らはそんなこと望んでない。そのことは、君が一番知っているはずだ。復讐は、しなくていいんだよ」
耳元で落ち着かせるように囁く。少しずつ、ヴィオラは落ち着きを取り戻していった。
「……この森はもう危うい。祠の近くなら狼達の安全は確保できる。そこに移ろう」
立ち上がろうとすると、服の裾が掴まれた。
「……アラウディ」
俯いたまま、彼の名を呼ぶ。
「……て」
「え？」
「僕を、森の外へ連れて行って」
その瞳に宿っていたのは、悲しいくらい純粋で、悲痛な覚悟だった。
「でも……」
「彼らの狙いは、僕の持つ石。これ以上、狼達に犠牲を出すわけにはいかない」
「……わかった。僕に考えがある」
アラウディはヴィオラと共に森を抜け、彫金師の元へ向かった。
「この石を、ボンゴレリングに変えて欲しいんだ」
「これは……ふむ、心得た。完成すれば……さしずめ雪のリングとなるだろうな」
そして、白銀の石をはめ込んだリングが完成する。
雪のリングを持ち、アラウディの紹介でボンゴレに入ったヴィオラは、雪の守護者として働き始めた。
ボンゴレでの生活の中で、ヴィオラは彼らに対してのみ警戒を解く。
そして、アラウディとヴィオラはお互いに惹かれ合い___
「ヴィオラ」
「何？」
「君が好きだ。初めて君の神域で出会った、あの時から」
「……神気の相性はね。人の相性に直結するんだよ」
「……え」
「僕も好きだよ。……君だけだ」
そうして二人は結婚し、ヴィオラは双子を産んだ。
兄はアラウディに、妹はヴィオラによく似た兄妹だった。
そうして、ヴィオラとアラウディは寄り添うように眠りについた。
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作者名：レイン | 作成日時：2018年8月7日 15時
