33 you ページ34
・
雪｢…(人1)ちゃん。少し、お話があるの。｣
そう呟いた雪お姉ちゃんは泣きそうな顔で笑う。笑顔が悲しそうだと思ったのは、気の所為ではなかったんだと思った。
どうしてかは分からない。けれど、小さいながらも真っ直ぐなその声に、しばらく目をそらすことが出来なかった。
優しく吹き抜ける春の風が雪お姉ちゃんの綺麗な髪を揺らす。
まるで今の私たちを表すかのように、眩しいほどに照りつけていたたずの太陽の光が、雲によって遮られていった。
『うん、どうしたの？』
その雰囲気に耐えられなくなり、決して明るい雰囲気でないことを分かっていながらも、いつものように明るくそう返す。
ベンチで座って話そうと言われて、まだ太陽の熱が残るそれに2人で腰掛けた。
雪｢…まず初めに、(人1)ちゃんに謝らないといけないことがあってね。｣
ポツリ、ポツリというようにお姉ちゃんは話し出す。
雪｢私ね、膵臓癌の末期なの。
気づいた時にはもう遅くて、私が生きられるのも、もう後5ヶ月あるかないかくらいだって…。今まで、黙っていてごめんなさい。｣
『っ…』
ガツン、と頭を殴られたような衝撃が走り、思考が止まる。
思わず出た声は掠れていて、言葉にならなかった。
上手く頭が回らない中、雪お姉ちゃんは言葉を続ける。
雪｢それで、丁度明日から抗がん剤治療が始まるの。
だから、明日からは、毎日お話出来るかは私にも分からない…。
(人1)ちゃんが綺麗だって、好きだって言ってくれたこの髪も、もう見納めかな〜、なんて。｣
そう言って笑う雪お姉ちゃん。私のために無理して笑ってくれているのは、言われなくてもよくわかる。
でも、その優しさが、笑顔が、私には少し痛かった。
『無理して、笑わないでよ。』
雪｢…え？｣
『辛い時ってね、辛いその時に泣かないで笑っちゃうとね
なんて言うか、後でもう泣き方なんて、わかんなくなっちゃうんだと思うの。
…だからね、あんまり、無理して笑わないで。』
思わず口をついたその言葉に、どの口が言っているんだ、と自分でも思う。
それでも、あまりにも辛そうに笑う雪お姉ちゃんに、そう伝えずにはいられなかった。
雪｢…ありがとう。｣
細い声で呟かれたその声は震えていた。
雪お姉ちゃんの綺麗な横顔には、キラキラと輝く大粒の雫が頬を伝っていた。
┈┈┈┈┈
『明日からは、私がお姉ちゃんに会いに行くから。
…だから、またいっぱいお話聞かせてね。』
雪｢…うん！｣
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 135人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こすもす(プロフ) - れもん♪さん» ありがとうございます！なかなか更新出来ずにすみません。エンドは正直迷っているんです、、始めは悲系で書こうとしていたのですが、最近はハッピーエンドもいいなあ、なんて思ったり、、優柔不断ですみません。ぜひ読ませていただきます！ありがとうございます！ (2020年4月30日 16時) (
レス) id: e0e3e6cb7b (このIDを非表示/違反報告)
れもん♪ - とてもいい作品ですね！楽しみにしながら読んでます！ハッピーエンドですか？私も「人気者の、和也くん。」という小説を書いているので良かったら読んでください！これからも応援してます！ (2019年12月7日 14時) (レス) id: 94ce30e2f8 (このIDを非表示/違反報告)
こすもす(プロフ) - きいちゃん∞さん» ありがとうございます！これからも楽しみにしてます(^-^) 私もがんばって出来るだけ早く更新します！笑 (2015年7月6日 23時) (レス) id: 657ee5dda8 (このIDを非表示/違反報告)
きいちゃん∞(プロフ) - こすもすさん» ありがとうございます。すごく嬉しいです。更新が遅い私ですが、これからもよろしくお願いします。私も｢虹｣大好きです (2015年7月5日 11時) (レス) id: 835f387473 (このIDを非表示/違反報告)
こすもす(プロフ) - きいちゃん∞さん» コメントありがとうございます！他になければ、悲系にさせてもらいます！ きいちゃんさんの作品、すごい大好きです！これからも頑張ってください！ (2015年7月5日 10時) (レス) id: 657ee5dda8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こすもす | 作成日時：2015年5月20日 0時
