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なんでもない ページ10

「まあ、目立たないところだから。最終的になんて書くつもりなのかちょっと気になってね。……どっかい、か」

あかりは慣れた手つきで『どっかい』の文字をえがくよう壁に張り付いたガムを片付ける。

「どっかいけ、かな。ここまで来るとやっぱり………」

普段のあかりらしくない哀愁漂う声色だった。

「……知ってる餓鬼なのか?」
「なんでもない!ほら、そろそろ帰んな!今日はあんたが食事当番なんだから!あ、夜はあっさりお塩汁がいいな」
「今夜は豚の生姜焼き!」
「えーっ」

姉弟の口喧嘩を遠くに、Aは黙りこくる。Aのその目は、先程までガム文字の貼られていた壁を、ただひたすらに鋭く見つめていた。

「……………………やっぱり、Aは浜中が……………」
「A」

呼ばれて振り向いたAはにこりと笑う。一間置いてから、ぐぅ、と間抜けな腹の音が鳴り響いた。

「A………」
「A………」

呆れた目線が刺さる。

「あはは、二人の話聞いてたらお腹すいちゃった。帰ろっか光。あ、ちなみにAは豚の生姜焼きの気分だなー」
「えーAまでー?」
「そーいうこった。2対1だ諦めろ」
「Aを人数に入れるのはずるじゃない〜?」

しくしくと嘘泣きをするあかりを光が手で払う。二人の掛け合いに笑ったAが先に歩み出していた。

そして、普段と何ら変わりのないAの足取りを確認して、あかりは光に駆け寄る。

「今日は送ってあげて。あの子繊細なところあるから……」
「ったく……わあってるよ」

ああ面倒臭いと、光は頭を乱雑に掻いた。

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(プロフ) - 続きが気になります。更新待ってます。 (1月20日 22時) (レス) id: 080f4a0e49 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パスカル | 作成日時:2021年8月11日 15時

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