103話 ずっと独り ページ8
シラside
我は羅刹だ
…羅刹だった
しかし羅刹は、一部だった我を捨てた
あのときの羅刹が放った一撃は、Aに対する攻撃ではない。
…我を捨てた先に、Aがいたのだ。
我は羅刹に捨てられてから、ずっと独りだ
確かに、Aの中に入ってはいるが、我のことなど誰も気にしてはくれぬ。
羅刹に捨てられたのだから、名もない。
羅刹に捨てられた羅刹。
死んだ羅刹。
その場の思い付きで『死羅』と名乗った
…でもまだ、希望はあった。
羅刹が迎えに来てくれると、思っていた
…だが、案の定来なかった。
折角、羅刹をあの二人の攻撃から守ったのに、羅刹は消えた
羅刹に捨てられたのなら、力も無くなってしまえばよかった。しかし、力は存続していた。
我の力はAの命、記憶を浸食していった
止めたかった。…だが羅刹に捨てられた我は、羅刹の力に抵抗する術はなかった
だから…あの蜘蛛と小蛙に忠告したのに…
羅刹は倒せぬし、Aにも申したのに、言葉の意味を理解してはくれんかった…
Aの中にいる間、ずっと独りだ
その独りの空間での唯一の楽しみは、Aの気分が高揚するときだった
Aの中に入っているのだから、Aの感情が我にも伝染する。Aが楽しい時は我も楽しい気分になるのだ
…伝染するなら、Aが好きになった者を我も好きになるということだ
つまり、我はあの蜘蛛と小蛙にその感情を抱いている。
Aの中から見る蜘蛛と小蛙は本当に楽しそうで、いつもAに笑顔を向けている
その笑顔を見たAも嬉しくなり、我も嬉しいという感情が芽生えた
…しかし、その笑顔は何時までも続く事はなかった
とうとうAの記憶が全て消えたときだ
記憶を全て貪った羅刹の力は、留まることなくAの身体を浸食していった
我はずっと独りで戦っていた
この羅刹の力を止めようと必死に
…だが、その頑張りは誰も見ていなかった
あの小蛙には怒鳴られるし、煙の女妖怪にも『死羅のせい』などと言われるし
我はなにもしていない…!何も出来なかった!
言えばよかったのに、この時に限って羅刹の邪な部分が出てきて、我に助けを求めることを許してはくれなかった
…して、とうとうそのもどかしい感情が妬みと憎悪へと変わり、Aに訴えかけてしまった
何をしても、我は独り。
羅刹に捨てられた、死んだ存在。
『死羅』か…。我ながら良い名をつけたものだ
62人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「妖怪ウォッチ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レミィドール - 途中途中、泣きながら読んでいました (2019年5月3日 0時) (レス) id: 104f8ae6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ツクヨミ - 久しぶりに見ましたが、やっぱり最高です! (2018年12月21日 21時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
キリンロング - とても面白かったです〜(*≧∀≦*) (2018年7月6日 17時) (レス) id: 390c1ef0c5 (このIDを非表示/違反報告)
るーく - いえいえ!あの…!リクエストのことで…!土蜘蛛と大ガマ!以外でもいいですか?okでしたら…酒呑童子と…& 難蛇龍王がいいなと…思いまして…!どうですか? (2018年4月3日 18時) (レス) id: 63408e7496 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - るーくさん» 最後まで見てくださって本当にありがとうございました!るーくさんには本当元気もらいました!なにかリクエストあったら言ってください!作品にさせていただくかもしれません! (2018年3月30日 19時) (レス) id: 4558bdaa92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ナミ | 作成日時:2018年1月8日 3時