111話 守りたい想い ページ16
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貴「…落ち着いた?」
『…うむ…』
ずっと頭の中でシラの泣き声が聞こえた。
シラは今まで、どことなく大人びた態度をとっていた。でも本当のシラは、まだ子供のはずなんだ。…だって、シラは私だから。
私はシラで、シラは私。
二人とも、同じだから。嫌でも独りにはなれっこないんだよ
『…我は…この世に存在してすぐに孤独に陥った。…親のような存在の羅刹には突き放され、想い抱く相手からも煙たがられ…辛かった』
貴「……うん」
私は否定することも肯定することもなく、ただシラの話を聞くことしかできなかった
『羅刹に捨てられたのは、死と同じ。…その場で“死羅”と名乗ったのだ』
…死んだ…羅刹……
『我は、奪い傷つけることしかできぬ羅刹と…その力に支配されている我が……憎い』
貴「……」
『……だが、羅刹は…尊い。』
貴「……え?」
『……殺せないのだ…』
シラは戸惑っていた。
憎いのに、嫌いになりきれない羅刹への想いに
そして、その羅刹を殺すことに抵抗を持っていた
貴「…解決法って、羅刹を殺す道しかないのかな…」
『…何が言いたいのだ』
貴「…みんな羅刹を殺そうといきり立ってるけど…その殺意って、羅刹にとって都合いいんじゃないのかな…」
羅刹を殺そうとしていたら、嫌でも頭の中は殺意でいっぱいになるはず…。その殺意をも、羅刹は吸収するんじゃないかな…?
…だとしたら、土蜘蛛と大ガマが危ない
…でも、私が行ったところで…足手まといにしか…
『…記憶をなくす前のお主は、大切な者を守ろうと努めていたぞ』
…え?…記憶をなくす前の私……?
『我はずっと見てきた。…妖怪たちを救うためには、まず己が強くならねばと、上手く扱えぬ妖術の鍛練をし、守られているだけでは駄目だと、しっかり自分を持っていた』
貴「…今の私には、それがないの…。怖いの。私のせいで二人が死んでしまったらって思うと…」
不安がいっきに押し寄せる。
行きたい。本当は凄く行きたいのに、
足が動かない。
『…あ奴らを信じてはやれぬのか』
貴「……」
シラは大きなため息をつくと、少し喋らなくなった。そして
『…我はお主を守れなかった。故にお主は記憶をなくした。だが何もできなかったわけではない。…羅刹の力に記憶の全てを奪われる前に、記憶の一片を隠した。…それを、今お主に託そう』
貴「記憶を…隠した…?」
シラ『…守りたいという想いの記憶だ』
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レミィドール - 途中途中、泣きながら読んでいました (2019年5月3日 0時) (レス) id: 104f8ae6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ツクヨミ - 久しぶりに見ましたが、やっぱり最高です! (2018年12月21日 21時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
キリンロング - とても面白かったです〜(*≧∀≦*) (2018年7月6日 17時) (レス) id: 390c1ef0c5 (このIDを非表示/違反報告)
るーく - いえいえ!あの…!リクエストのことで…!土蜘蛛と大ガマ!以外でもいいですか?okでしたら…酒呑童子と…& 難蛇龍王がいいなと…思いまして…!どうですか? (2018年4月3日 18時) (レス) id: 63408e7496 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - るーくさん» 最後まで見てくださって本当にありがとうございました!るーくさんには本当元気もらいました!なにかリクエストあったら言ってください!作品にさせていただくかもしれません! (2018年3月30日 19時) (レス) id: 4558bdaa92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナミ | 作成日時:2018年1月8日 3時