検索窓
今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:31,987 hit

111話 守りたい想い ページ16









貴「…落ち着いた?」


『…うむ…』


ずっと頭の中でシラの泣き声が聞こえた。

シラは今まで、どことなく大人びた態度をとっていた。でも本当のシラは、まだ子供のはずなんだ。…だって、シラは私だから。

私はシラで、シラは私。


二人とも、同じだから。嫌でも独りにはなれっこないんだよ


『…我は…この世に存在してすぐに孤独に陥った。…親のような存在の羅刹には突き放され、想い抱く相手からも煙たがられ…辛かった』

貴「……うん」


私は否定することも肯定することもなく、ただシラの話を聞くことしかできなかった


『羅刹に捨てられたのは、死と同じ。…その場で“死羅”と名乗ったのだ』


…死んだ…羅刹……


『我は、奪い傷つけることしかできぬ羅刹と…その力に支配されている我が……憎い』


貴「……」


『……だが、羅刹は…尊い。』


貴「……え?」


『……殺せないのだ…』


シラは戸惑っていた。

憎いのに、嫌いになりきれない羅刹への想いに


そして、その羅刹を殺すことに抵抗を持っていた


貴「…解決法って、羅刹を殺す道しかないのかな…」


『…何が言いたいのだ』


貴「…みんな羅刹を殺そうといきり立ってるけど…その殺意って、羅刹にとって都合いいんじゃないのかな…」


羅刹を殺そうとしていたら、嫌でも頭の中は殺意でいっぱいになるはず…。その殺意をも、羅刹は吸収するんじゃないかな…?


…だとしたら、土蜘蛛と大ガマが危ない


…でも、私が行ったところで…足手まといにしか…


『…記憶をなくす前のお主は、大切な者を守ろうと努めていたぞ』


…え?…記憶をなくす前の私……?


『我はずっと見てきた。…妖怪たちを救うためには、まず己が強くならねばと、上手く扱えぬ妖術の鍛練をし、守られているだけでは駄目だと、しっかり自分を持っていた』


貴「…今の私には、それがないの…。怖いの。私のせいで二人が死んでしまったらって思うと…」


不安がいっきに押し寄せる。

行きたい。本当は凄く行きたいのに、
足が動かない。


『…あ奴らを信じてはやれぬのか』

貴「……」


シラは大きなため息をつくと、少し喋らなくなった。そして


『…我はお主を守れなかった。故にお主は記憶をなくした。だが何もできなかったわけではない。…羅刹の力に記憶の全てを奪われる前に、記憶の一片を隠した。…それを、今お主に託そう』


貴「記憶を…隠した…?」






シラ『…守りたいという想いの記憶だ』

112話 二人のために→←110話 独りじゃないから



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (71 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
62人がお気に入り
設定タグ:大ガマ , 土蜘蛛 , 妖怪ウォッチ   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

レミィドール - 途中途中、泣きながら読んでいました (2019年5月3日 0時) (レス) id: 104f8ae6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ツクヨミ - 久しぶりに見ましたが、やっぱり最高です! (2018年12月21日 21時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
キリンロング - とても面白かったです〜(*≧∀≦*) (2018年7月6日 17時) (レス) id: 390c1ef0c5 (このIDを非表示/違反報告)
るーく - いえいえ!あの…!リクエストのことで…!土蜘蛛と大ガマ!以外でもいいですか?okでしたら…酒呑童子と…& 難蛇龍王がいいなと…思いまして…!どうですか? (2018年4月3日 18時) (レス) id: 63408e7496 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - るーくさん» 最後まで見てくださって本当にありがとうございました!るーくさんには本当元気もらいました!なにかリクエストあったら言ってください!作品にさせていただくかもしれません! (2018年3月30日 19時) (レス) id: 4558bdaa92 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナミ | 作成日時:2018年1月8日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。