33話 ページ34
ぴちゃんっと水道水が溜まった水に落ちて波紋を作った。
逃げられる、今なら確実に。
兄者さんは熱で少しばかり動きが鈍くなってる
今なら…
動き出した足が二階に向かう。
すれ違った時に兄者さんの顔は伺えなかった。
気にしなくていい、あの人は私を殺そうとしてるんだから、
逃げろ、まだ間に合う
逃げなきゃ私が殺される
バッグを掴んで階段を駆け下りた。
リビングからは一切物音がしてなくて、まだ兄者さんはあのままなんだろうかと足が止まってしまう。
一応、ちょっとだけ確認しよう。
まだ時間はあると思うし…
開けっ放しになっていた扉から顔を覗かせ、台所にゆっくりと近づく。
影からそっと覗いて、思わずバッグを落としてしまった。
『__う、そ』
見えたのは、うつ伏せで倒れ込む兄者さんの姿。慌てて駆け寄って口元に手を当てる。
熱い息が明らかに早く繰り返されていて、首に手を当てるとさっきより熱が上がっていた。
『しっかりしてください…！今助けを…』
呼ぶ必要はないでしょう？
頭の中に響く声。
紛れもない自分自身の声だ。
今、逃げてしまえばいい。
絶好のチャンスでしょ？
この機会を逃したら、死んじゃうよ？
分かってる。そんな事、私だって承知の上だけど、
『今、助けますから』
私を救ってくれて、熱のせいではあったけど優しく接してくれた彼を放っておけるほど、私はまだ腐っていないつもりだ。
彼の腕を肩にかけてその体を持ち上げる。
やはりがっしりとした体型の通り重いけど、バイトで重労働していた私ならこれくらい頑張ればソファまでは運べるだろう。
荒い呼吸と汗が酷い…
濡れタオルを用意して、あと毛布、それと薬と熱冷まシート…それから、
と頭の中ではドラマで見た看病の映像を思い浮かべながら運んだ。
買い物に行った2人が帰ってくるまでの間だけ、その間だけ私が彼を救えたらそれでいい。
恩は返しておきたい。蟠りは全て取り除き、何の未練もない状態で出ていきたいからだ。
金輪際関わる必要がないように
『…なんでかなぁ』
逃げてしまえば良かった…
足枷も外れたこの状況は、もう二度と訪れないだろう。それを蹴ってしまって本当に良かったのか。でも、熱の時は辛い。誰かに傍にいてほしい。人肌が恋しくなるとはよく言うが、本当にそうだと思う。
だから、私も彼の傍にいようと思った。
自分がそうして貰えなかったから。
きっと、私も少し熱が移ったのかもしれない。
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北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます！頑張って下さい！応援してます！ (2023年2月20日 17時) (
レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます！ (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…！何度も…！！本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ！！ (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…！とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです！！今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：。 | 作者ホームページ：http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時：2019年3月7日 18時
