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療養の始まり ページ28

いつもなら耐えられるのに、力が入らなくて尻もちを着く。



「馬鹿!!は、柱になんてこと……!俺は知らないからな!」

「伊之助謝れ!
強くなりたいのはわかるけどAさんも治療中だろ!」



「や!だ、だって避けると思っ……!」


「伊之助君。
自分の無力さを知って本当に悔しいと思ったんですか」

「どういう意味だよ」

「今の拳に悔しさは感じられませんでした。
ふざけてやるくらいなら最初から殴らないでください」

「……あ?」ピキ



伊之助君は俺に近づいて血管を浮きあがらせていた。



「お前が病人だから手加減しただけだし」

「だから、手加減するならやめてください。
俺が弱った鬼でもそうやって手加減するんですか?」



ガッ!と服を掴まれる。



「俺はそんな挑発には乗らねぇ」

「喧嘩は売ってませんよ。
本当に弱い拳で、悔しい思いが伝わらなかったんです」



殺気立った。



「うるせぇ!!お前に何がわかんだよ!!
目の前で必死になってる奴がいても!ただ見ることしかできねんだ!!

俺は弱いから!弱いからこうやって頑張ってんだよ!!
弱いなんてこたわかってんだよ!!もう弱いとか言うなよ!

これ以上惨めな気持ちにさせんな!!ばーか!!」



シーン……とする。

伊之助君を泣かせてしまった。



「ごめん、意地悪した。

(俺も、カナエのこと守れなかったからな……)」



「何を騒いで……ってAさん!!
伊之助君!Aさんに何してるんですか!」



このあと伊之助君はアオイさんに散々怒られていた。



「Aさん」



そして俺もしのぶさんに怒られた。


「それと、貴方の病気がわかりました」

「?」

「神経障害です」


継続的に身体に激痛が走る病気。
手足の筋力が落ちて感覚が鈍くなることもあるそうだ。


「Aさんが貧しい生活をしていた時から栄養が偏っていたことが原因かもしれませんね」

「ろくに食べてなかったからか今もあんまり食べない」

「はぁ、それですよ。
栄養が偏っていたのに、激しい運動をするからです」


「俺、どうなるの?」


「治りますよ。健康的な生活を送っていればの話ですが」


「!」


「但ししばらく療養してもらいます。
私の許可なしに外出しないでください。全集中の呼吸を少し使おうとしただけで倒れましたからね」



「わ、わかった」

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作者名:ちゃゆ | 作成日時:2021年11月29日 15時

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