声のでない私と隆平くん (ページ17)

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手ページ17

丸山side

メモ欄にある文字を見ていた

そっか、こんな苦しい過去があったんやね

Aちゃんは、顔を伏せ

下を向いていた

丸｢Aちゃん、話したく無いのにこんなこと教えてくれて
　ありがとうね？ｷﾀﾅｲ過去なんて言ってるけど
　全然そんなことあらへんよ？｣

それでも、Aちゃんは俯いたまま。

丸｢なあ、僕に提案があるねん｣

そう言うと、僕は小さい体を自分の方へ引き寄せた

丸｢僕な？いまやから言わせてもらうけど、Aちゃんが好きやねん
　親がAちゃんを裏切っても僕は裏切らない
　こんなにも好きだから。誰よりも、好きだから
　僕を信じてくれへん？｣

恐る恐る見ると、目には涙を浮かべていた

本当に、信じていいの？と言う、揺れている瞳

丸｢信じて。裏切ったなら、いくらでもビンタしていいから
　僕の名前、よんで？｣

｢…………！｣

口をパクパクさせて、涙を流しながら

必死に頑張っている

｢………！……………………！｣

口は、隆平君としっかり動いている

丸｢頑張れ、できるよ！大丈夫｣

僕の腕にしがみついて、喉に手を当てながら。

脳の中で、イメージする

鎖のついた心を、鍵のかかったドアを開ける

そして、手をさしのべて

暗闇から救い出すんやって

丸｢今からイメージしてな？僕が、Aちゃんの心のドアを
　開けるから、手を指し伸ばすから、その手を握るのを
　想像して？絶対に上手くいくから｣

体力が無くなるほど、頭が痛くなるほどイメージした

すると、かすかに小さな声が聞こえた

｢…………ん…………い………！？｣

丸｢そうそう………もう少し！がんばれ！｣

｢………くん…………い………りゅ……へ……！｣

心の中に入った手を握って……………そう願った時だった

｢………くん………りゅう、へいくん………｣

丸｢！？！？｣

僕は思わず息を飲んだ

余りにも綺麗な声で、透き通っていたから

｢で、た………ねぇ…でたよ、こえ……｣

丸｢よかった………よかった！｣

力を込めて、抱き締めた

すごく、暖かくて、こんなに愛しくなるのは初めてだった

｢あ、のね？わたしも、想い、つた……ぇたい｣

まだ出したばっかりの声は小さくて、掠れていたけど

ちゃんと聞こえたよ