この世に生まれたことを後悔するよ。 (ページ2)

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「王都の人間に送る骨董品が盗まれた、とかで憲兵団が大騒ぎだ。朝から平和なこった。こっちは忙しいってのに
」

Aが日中、我が家として生活しているのはウォールローゼ北部の集落にある寂れた孤児院だった。

ウォールマリアとウォールローゼ内にいる孤児のみんなを住まわせる、昔ながらの乱雑な遼だった。
Aなどの、親に愛を受けたことのない子供はそれで十分だったが、端から見たら厳しい監獄のようだと言われている。

院長である50代くらいの見た目をした女性、ケーシャは、朝から新聞を読んではぁっと深いため息をついた。
孤児院のリビングでは、遅れて起きてきた子供たちが、朝食をお預けにされて、掃除をしている。
朝６字に起床できなかった者は、朝食抜きで掃除、と言うのが孤児院でのルールだった。

「Aはいつになったら起きてくるんだ。」

昨日の真夜中から明け方にかけて、憲兵が血眼で探すあの骨董品を盗んで売り捌いていた彼女は、お昼前になっても起きてこない。
彼女が昼過ぎまで寝るのはよくあることで、いつも日が沈んでから盗みに出かける分、起きるのが遅いのだ。

毎朝6時になっても起きてこない子供は、ケーシャや、寮のお手伝いさんに叩き起こされるのだが、彼女は叩き起こされる事はない。

それは、彼女がいつも寝るときはドアノブに椅子の背もたれを引っ掛けてドアが開かないようにして眠るからだ。
夜な夜なケーシャやお手伝いさんに部屋に侵入されることを防ぐためだ。

彼女の部屋の机の引き出しには、寮の職員である女性たちから盗んだアクセサリーなどが置いてある。
バレたら面倒なことになる。彼女はそうわかっていた。

「ゲイリー殿！！！」

ゲイリーとはこの遼を運営する神父の名だ。
しかし今日はゲイリーは不在だ。代わりに呼びベルのカンカン、という音に反応したのはケーシャだった。

「本日、例の件で地下街での捜査をしたのですが。
どうやらここいらでよく見られる孤児があの壺を抱えて逃げていったと言うのを目撃した、と言うような情報が出…」

「うちの子たちに限ってそんなことをするような事はありません。うちは厳しく育ててます。王政に支えられるほどの実力を持つ兵士を産み出すためですよ？
ここにいる子供たちは全員未来の士官候補生と言っても過言じゃありませんよ。」