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皆様、ここ真選組には"ドS王子"と呼ばれる青年がいるのはご存知だろうか?
皆が食堂に集まるこの時間、一人寝起きなのか少し重い足取りでユラユラと廊下を歩く青年がいた
普通の隊士ならばこんな時間に起きてくる等問題だが彼の隊服が平隊士とは違い、土方や近藤と同じ物を身に付けているところを見ると彼はこの真選組で上の立場に位置しているのだろう
歩く度にサラサラと揺れる栗色の髪に整ったベビーフェイス……そう、彼こそが"ドS王子"である
見た目だけではわからないが、実は天使の皮を被った悪魔なのだ
栗色の髪の彼はフラフラといい匂いに釣られ食堂へ足を踏み入れる
「お疲れ様です!はいどうぞ」
するとすぐにカウンターから渡されるお盆を反射的に受け取るがそこに並ぶ小鉢にふと動きを止める
ここ最近真選組では女中がいなかった為連日三日三晩焼そばという地獄が繰り広げられていた筈であり、彼はその地獄に2日目で飽き今まで外食続きで食堂には寄り付かなかった
だが目の前にはなんとも立派な定食が広がっており、なるほど自分はこの匂いに釣られてきたのかと納得する
一体だれが作ったのか?というより先程のむさ苦しい男が発したとは思えない鈴のような声はだれなのか?
「…大丈夫ですか?もしかしてお疲れですか?」
ずっと手元から視線をあげずに固まっていた事を心配に思ったのだろう
かけられた言葉に青年はふと視線をあげる…
「………」
「?どうしました?」
「…どうも」
「あ、はい」
青年はそそくさとお盆を持ち上げると見知った二人を見つけ足を向ける
「おはようごぜーやす、近藤さん。」
「おう!今起きたのか 総悟!」
「テメー総悟…朝稽古サボりやがったな」
「なんでィ、いたのか土方。いや、そんな事より…」
「は?」
チラリと総悟は視線を逸らす
その先には空いたお皿を持った隊士達がカウンターへ詰め寄り、それを笑顔で受け流すAの姿が
普段他人の事を全く気にしない彼の珍しいその様子に土方は眉を寄せる
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作者名:湯葉 | 作成日時:2018年7月3日 8時