・ ページ12
.
真選組の女中の仕事は食事の準備に掃除に洗濯とまぁ至って普通の家事全般だがその量が尋常じゃなく多い
屯所は広いし、その広い分隊士も多く洗濯物や作る食事の量も多い
以前は何人かのベテラン女中でこなしていたみたいだが皆お歳だとゆうことで一気に引退してしまったらしい
それからは何人か新しい人が入ってきたみたいだがこのハードさに皆逃げ出してしまい、だれも求人に寄ってこなかったという
そこで最近は隊士みんなで交代制でなんとか回していたが今まで家事とは無縁の男達の手では荒れていく一方のようだ
(なるほど…)
屯所全体のこの状態も、それなら納得できる
「道場の掃除は僕達隊士がするので必要ありません。あと隊長格以上は個人部屋を持っているんですが、頼まれない限りはそこも掃除はいりません。」
「わかりました。」
「あっ!もうこんな時間だ!次は厨房に案内しますね」
せかせかと焦ったように進んでいく山崎にAはのんびりとついていくがふと視界の端に入った物に立ち止まる
そこには庭一面にタライが並べられ、全てのタライに山盛りに着物が積まれているではないか
(……そりゃ普通の人間は逃げ出すよね。見なかった事にしよう)
軽く溜息を吐きつつ山崎の背中を追いかける
「明日からは隊士達の食事を朝昼晩と用意して頂くんですが、朝はもう済ませてあるので今日は昼と夜の分をお願いします。…さぁ、厨房はここになります」
暖簾をくぐるとなかなかに広い厨房が広がっている
「大体の食材はこことここかここにあります。隊士が多いので作って頂く量が尋常じゃないんですが…」
「お昼ご飯は何時からですか?」
「12時から13時の間ですね……今もう10時なんですが間に合いますか?よかったら手伝いますよ」
「んー…大丈夫だと思うので、山崎さんはお仕事に戻って下さい。」
「…本当に大丈夫ですか?もしあれだったら遠慮せずに呼んで下さいね?」
「はい!」
実はいうと山崎は最初のAと土方の家事をした事がないという衝撃的会話を聞いていたのだ…
A一人を残すのは不安しかないが本人がこう言っているのだから任せてみるしかないだろう
なにより自分にも仕事が溜まりに溜まっている状況だ
本当にやばくなったらすぐに自分を呼んでくれるだろう
「じゃあ、お願いします…」
「はい!頑張ります!」
(僕もあなたのその笑顔で頑張れます)
山崎は心の中で深くお辞儀をして厨房を去っていったのであった…
.
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:湯葉 | 作成日時:2018年7月3日 8時