元、小鳥遊事務所の専属カメラマン。 (ページ10)

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天side

『くぅ……っ。甘い誘惑とは正にこのこと…』

「キミ割とノリノリだったけどね」

街で偶然見かけたから声をかけたら、分かりやすいくらいテンパっててかわいいかったから、このままボクに気持ちを持って行けないかな、なんて淡い希望を抱きつつ、前にもらったスイーツビュッフェに誘うと少しの間、でもすごく熟考して弱々しく『行きたいです……』って。

何かいろいろ考えていたみたいだったけど、それが全部ボクのことだったらいいのに、なんて。ちょっと欲張りかな。
悔しそうにボクの後ろをついてくる琴葉に内心微笑んでいると、目的のスイーツショップについた。

「あれ、もしかして琴葉ちゃん？」

『はい、お久しぶりです』

「キャ～！！！んもー、待ってたんだからねずっと～！！」

『ふふ、お元気そうでなによりです』

パティシエールらしい女性と仲良さげに話す姿は、とてもじゃないけどさっきまで百面相していたのと同一人物には見えない。
男装していた時の"優"を思わせる、人受けする優しい笑顔に、言葉遣い。思わず凝視していると女性はボクに気がついた。

「なぁに、琴葉ちゃん。そこのイケメン。彼氏？」

『っ！？ち、違っ「そうですね」……違います』

「彼氏かぁ～。あの琴葉ちゃんにねぇ。昔は"男の人ですか？……興味ないですね"なんて言ってたじゃなーい！」

『いやだから違…「本当は"まだ"そうじゃないんですけど、振り向いて貰えるようにがんばります」…………ｯ』

「……」

『……お姉さん？』

「青春みと尊みを感じる……エデンはここだった……」

『おねーさーん？』

「大丈夫任せて。今日はいつも以上に張り切って美味しい作るわ。
……あとここ、一応マナーとか節度ある人達だと思うから大丈夫だと思うけど、プライベートルームにご案内しましょうか？」

「！」

『……どうしますか？』

「お気遣いありがとうございます。
大丈夫です」

そう、と微笑むと女性は「楽しんでいってね」と言って奥に消えて行った。
ボクらも空いている席に座って一息つく。

「それじゃ……」

『行きましょう』

さっきの会話で恋人宣言(仮)をしてからあたふたしていた琴葉だけど、今はそんな気を感じない。本当に切り替えが早いと言うべきか、
……食い意地が張ってると言うべきか。

お皿を片手に歩き出す。
どこもかしこもお菓子だらけ。
店内には甘い香りが広がっていて、思わず口角が上がるのがわかった。

……とりあえずドーナツかな。