(((((゜゜;) ページ19
「琴葉ってさ、初めて会ったときからなんか……なんか、違うなって思ってて。
まさか男装してたなんてね」
「お家の方もいろいろあったみたいですしね」
男装、の部分を周りに聞こえないよう小声で言って、彼は笑った。
あの日、マネージャーの"弟"として私達に会った彼女。いったいあの日、どんな気持ちだったのだろうかなんて、今更ながら気になってくる。
「新郎、入場」
アナウンスと共に扉が開けられ、白いタキシードに身をつつんだ九条さんが入ってきた。
いつか見た、雑誌のブライダル特集より気合いが入っているのがみてとれる。
もうこの時点で七瀬さんは泣きそうだ。
「……てんにぃ」
彼の小さな囁きは耳に届いたらしい。
目線を此方に向けた九条さんはふわり、笑う。
"現代の天使"と謳われる、彼の最上の笑みで、バージンロードを進んでいく。
最奥、神父の前までたどり着くと、振り向いて自身が入って来た扉を見つめた。
「……ことは」
誰の耳にも入らない、口の形だけで紡がれた、音の無い言葉。
熱の籠った、愛しさをめいっぱい詰め込んだ瞳で、九条さんは彼女を待つ。
きっとわかったのは、それほどいない。
愛されてるな、なんて感想が出てきた。
あの人にあんな顔をさせるのは、今までファンくらいだったのに、貴女が変えたんだ。
「新婦さんまだかなー？」
「琴葉のことだから絶対かわいいよな！」
「ミツ親バカみてぇになってるぞ」
「別にいいだろ！？なんていうか、俺たちの妹みたいな感じだし」
「琴葉ちゃん、なんだか雰囲気が変わりましたよね」
「なんかわかるかも。しーくん、最初の頃よそよそしかったもんな」
「コトハもワタシ達と打ち解けたということですね。……仲良きことは美しきかな！」
「ナギいいこと言う！
オレとユキも仲良しだよね！！」
「そうだね、モモ。
あれ、楽くんもしかして泣いてる？」
「……いや、別に」
「あはは……楽、天の姿をみて感極まっちゃったみたいで」
「……九条天、いい顔してんじゃん」
「ヤキモチか悠？
心の広い男にならねぇとモテないぞ。俺みたいにな」
「先日、御堂さんの楽しみになさっていた映画の録画を消してしまったとき、貴方ネチネチ言ってきましたよね…」
「はぁ？あれは巳波が…」
「トラ！ミナ！ケンカするな！！」
多分、私は今笑っているだろう。隣の彼が珍しいものでも見るような顔をしているから。
だから早く姿を見せてください。
旦那さん、待ってますから。
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作者名：ラディ | 作成日時：2019年5月12日 22時
