貸出審神者、ブラック本丸に放り込まれる (ページ6)

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　まだ刀は私の首から完全に離れていないし、殺気は向けられたままだし。私、まだ十七歳なんですけど？まだまだ子どもなんですけど？彼らからしたら赤子もいいところですけど！？
　だんだん視界が歪んできて、鼻水が奥から流れてくる。すん、と息を吸い込んで鼻を鳴らすけど止まりそうにはなかった。

「帰りたい……、私悪くないもん～……！」

　特殊な状況に涙腺がバカになったみたいだ。ボロボロと大きな粒が零れ落ちていく。拭おうにも体は動かせないし、鶴丸さんは泣き始めた私に動揺し始めたし。後ろも鶴丸さんの動揺が感染したみたいにざわつき始めた。
　出来る事なら座り込んで泣き喚きたいけど、それは首元にある刀が許してくれない。

　ほんと、なんでこんなことになったんだろ……。

「鶴丸殿、」

　奥から声が聞こえる。当たり前だけど知っている声だった。鶴丸さんを呼ぶ声に反応したのは私だけではなかったけれど、名前を呼ばれただけで彼の言いたい事を察したらしい鶴丸さんは重々しく息を吐き出した。

「……、いいのか」
「えぇ、私は構いません」
「他の者は異論無いか？」

　鶴丸さんの問いかけに反応するものはいなかった。全員が一期さんに同意する形なのだろう。当事者を放っておいて話を進めないでほしいんだけど、どうやら一応私をここには置いてくれるらしい。
　鶴丸さんは刀を下ろすとそっと鞘に納める。そっと息を吐き出して、私は自分が息を詰めていたのだと自覚した。
　涙はもう止まっているが、目は充血したままのおような気がする。冷水で顔を洗いたいけどそしたら折角気合を入れるために施したメイクが落ちてしまうし、悩みどころだ。

「……離れを使ってくれ」
「……わかりました」
「それと、俺たちには関わらないでくれ」

　切実な声だった。本心からそう望んでいるのがわかる。だから、私はただ頷いて了承するしかない。
　期間を言い渡されたわけではないけれど、暫く帰らなければ政府の人間が気にして帰るよう連絡してくれるはずだ。ちゃんと政府と連絡を取る手段は持っている。
　だから、だから。ほんの少しの辛抱。少し我慢すれば家に帰れるから。
　また出てきそうになった涙を、ぐっと堪えた。