貸出審神者、ブラック本丸に放り込まれる (ページ4)

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　刺すような殺気が形となった。
　首に冷たいものを感じた次の瞬間に遅れて風はやってくる。高い位置で結んだ髪とは違って顔の横に垂らした髪がゆらり、と揺れた。目の前には本来の輝きを失った、濁った金色(こんじき)が二つ。
　わお。音にはせず呟いた。呟かずにはいられなかった。

　こんな歓迎の仕方ってある？

　少しでも首を――身体を動かせば、すぐに真っ二つにされるだろう。そういう覚悟と殺気をさっきからずっと感じている。当然喉を震わせることもできないから、声を出す事も出来ない。たぶん、わかってやってる。

　さぁて、どうしようかな……。一応お父さんからこんな時のための対処法は教えて貰ってるけど。いやぁまさかそんな事ならないでしょって思ってたらこれだもんなぁ、人生ってわかんない。

　私は喋る事が許されていないから口を閉ざしたままだけど、目の前の男だって何も喋らないから進展がまるでない。いつまでこうしてるつもりなんだろう？私としては別にいいんだけど、目の前の男も、後ろで本体に手を掛けている彼らだってずっとこんな緊張感のある時間なんて過ごしたくないでしょ。しかも怪我してる状態で。
　しっかり確認してみると結構な人数が怪我をしたまま放置されているみたいだった。痛そう……。

「……、審神者、か？」

　問いかけに答えようにも刀(これ)が邪魔して答えられないんですけど～！？

　つん、と刃を指でつつけば、何を意図しているのか察してくれたのか少しだけ首との隙間が生まれる。本当に喋れるかどうかわからないほどの隙間だけど、まあ、多少の傷は仕方がない。こんな場所に事前情報無しで放り込んだ政府が悪い！

「審神者ではないですね」
「じゃあ何だって言うんだ」
「あ、いや嘘です。いや嘘では無い……？」
「？」
「一応、審神者って肩書にはなるのかな……？」

　審神者ではないと言った瞬間に和らいだはずの視線がまたきつくなる。
　ちょっと落ち着いてくれませんかねぇ。

「なんて言うか……、貸出審神者って者なんですけど、知ってます？いや知らないかなぁ、あんま知られてないみたいだし」
「知らん。審神者か審神者じゃないのかどっちなんだ」
「私もあんまりよく知らないんですけど、審神者になれる程じゃないけど霊力のある人間が、一時的に本丸で仮の主として過ごす部署に所属してます」