貸出審神者、ブラック本丸に放り込まれる (ページ2)

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Act.01*ブラック本丸とか聞いてない！ページ2

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　雨風に曝されて黒ずんだ門の前に立っていた。木でできた門には所々傷んでいるのが見えるが、あれは自然とできたものだろうか。……いや、目を逸らしてはいるが刀傷も見える、気がする。いや気の所為だ気の所為！じゃなきゃ門に刀傷が着くはずがない。
　一人で押して開くのは到底無理そうだった。一体私を何人使えば開くんだろう。
　とても重そうな門の表面に、一応手を置いてみる。ぐっと力を込めてもやっぱり開かない。あまりにも重すぎる。

　本来、本丸の門は審神者の意思、もしくはこんのすけの許可を持って開けることが出来るが、今目の前にしている本丸の中には人間も、こんのすけも居ない。
　なぜならとっくに審神者は引退して現世で暮らしているし、それに伴いこんのすけも政府の管理する部署に戻ったからだった。
　だからってか弱い女子高生をこんなに重い門の前で放置する？
　私を連れてきた政府の人間もそそくさと帰ってしまったし、さてどうしようか。

「すみませーん！今日からここで暫く務めることになった者ですけどぉー！」

　天井が霞んだ空の中に消えている門は、果たして正常に作動するのか。
　そんな疑問も他所に、門はゆっくりと開いていった。ギィ、と古びた音がする。徐々に見える中はどこか薄暗くて、私の知る本丸とは違うように思えた。
　門が完全に開けば中だって充分見渡せる。
　やっぱりどこか薄暗く、空気も悪い。心做しか呼吸さえ浅くなっている気がしてきた。

　……ここに入るの？本気で？一人で？

　審神者ではない人間に初期刀なんて与えられない。
　必要に応じ応じて刀剣男士の手を借りる職員もいるけど、私はそもそも既に何十振りと顕現されている本丸の仮の主として少しの期間過ごすだけだから、むしろ初期刀がいる方がやりづらい。
　どこか不気味な雰囲気を醸し出しているこの本丸に足を踏み入れるのはかなりの勇気がいるが、それでも仕事は全うしなきゃいけない。足が小鹿みたいに震えていても、入らない選択肢は無かった。

「お邪魔しまぁす……」

　どうかこの雰囲気の理由が、天気が悪いからでありますように……！

　心中願いながら、恐る恐る足を踏み入れる。生気の亡くなった葉が割れる音がする。水の与えられてないひび割れた地面から、乾いた音がする。
　頭の中では帰りたいの一択でも、やらなきゃいけない。
　なんとか自分を奮い立たせてはみるが、歩みは心を表すようにゆっくりだった。