四話 ページ7
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あれはいつの日だっただろうか。
確か……そう、私とウタの誕生日の時の出来事だ。シャンクスは私達に誕生日プレゼントとしてウタには赤、私には青を基調としたブレスレットを与えてくれた。
だけどウタはあの時、貰ってすぐ私のブレスレットに目を移し指をさして言ったんだ。
「私、青の方が良い!」
「…え?」
「交換して!」 と言いながら青のブレスレットに手を伸ばすウタを見て思わず背中にブレスレットを隠すとウタは不満そうに私とシャンクスの顔を交互に見比べた。
…またそうやってシャンクスに頼るんだ。
「…なぁA、交換してやれよ」
そしてシャンクスは…いやシャンクスに限らず赤髪海賊団の船員はとにかくウタに甘い。
どんな無茶なお願いも叶えようとするし、ちょっと転んだだけで 「ウタが怪我したぁぁぁ!!ホンゴウー!!」 って皆騒ぐから本当にうんざりしていた。
…まぁ、ウタがあまりにも泣くもんだから私も多少は心配してしまったのだけれど。
「……貸す、ぐらいなら」
これはせめてもの抵抗だった。
確かに今までに何度も何度も‘‘貸す’’ことはあったけれど‘‘あげる’’ことは一度もなかった。一時的に貸すぐらいなら、すぐに返してくれるなら……。
でも現実はそう上手く行かないもので、この日を境に私は‘‘シャンクスの娘’’ではなく‘‘ウタの姉’’として立ち回る役になってしまった。
「A、それでウタが満足しないのはお前もわかっているだろう?それに今日は二人の誕生日、幸せな日にしないといけないんだ。そんな日を自分のせいで悲しい日にするのも嫌だろ?」
シャンクスは若干涙目になって自身にしがみついているウタをよしよしと宥めながら 「な?」 と私の顔をじっと見つめる。
気がつけば他の皆の視線までもが私達に集まっていて 「空気を読め」 という圧がかけられているように錯覚してしまう。
そりゃあ私が我慢して交換すれば済む話なのは分かっている。確かにそれならウタが大喜びして、それに釣られて他の皆まで豪快に笑うだろうし、私にもそれぐらいの事は予想出来る。
だけどそれは、大切な物を犠牲にしてまで、自分が辛い思いをしてまで進みたい未来かと言われればノーだ。
…なのに
「うぅ…シャンクスぅ……」
「な?A」
「お前は‘‘お姉ちゃん’’なんだから、妹のウタに譲ってやるんだ」
「…分かった」
これが初めて‘‘お姉ちゃん’’を強いられた日だった。
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マシロ_mashiro(プロフ) - 太陽さん» コメントありがとうございますm(*_ _)m 大学生活も落ち着いてきたのでまた書き始めました。ゆっくりではありますが更新頑張ります! (4月12日 9時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - ぴよラムネさん» コメントありがとうございます!こちら白ひげ海賊団ルートとはまた一味違った海軍ルートとなっております。なるべく早く更新出来るよう頑張ります! (4月12日 9時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよラムネ(プロフ) - コメント失礼しますー!私を見て欲しかったを読みたくなって探してたらこの作品に出会いました!!別ルートがあったなんて…!更新頑張ってください!続き楽しみにしてます!! (4月12日 0時) (レス) id: 4c4725f70b (このIDを非表示/違反報告)
太陽(プロフ) - 更新されてる!!めっちゃ待ってました(●´ω`●)更新がんばってください! (4月12日 0時) (レス) @page36 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - シアナさん» コメントありがとうございます!大変お待たせしてしまってすみません。ストックが少ないので前より更新ペースは落ちますが、これからも本作品をよろしくお願いします(*´▽`*) (4月11日 21時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マシロ_mashiro | 作者ホームページ:http:
作成日時:2023年9月3日 16時