たったそれだけで良かった【クザン】

三十四話 ページ37

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え、デカ。シャンクスも2m近くあって大きいなぁって思ってたけどその比じゃない…よね？1.5倍ぐらいあるんじゃ……え。でっかぁ。


って、違うそうじゃない。
せっかく誰もいない間に抜け出そうとしてたのに見つかってしまった。


…けど、もしかしたら。もしかしたさ、案外、逃げれるんじゃいか。人に見つかってしまった以上脱出のチャンスは今しかないのだ。


こっそりは無理だったけどきっと何とかなると根拠の無い自信を持ち、男性の横を通り過ぎようと駆け出すけど、すぐに両手で体を持ち上げられて阻止される。



｢きゃっ｣

｢こらこら、勝手に逃げちゃァダメでしょうが｣

｢えと、いっ、家に、帰るだけ……です｣

｢それでも手続きがいるから却下だ｣

｢す、すぐそこに…多分、探してて、……｣



何とか説得出来ないかあれこれ言っては見るもののことごとく拒まれる。


そりゃあ至極当然だとは思う。だって私は直前まで海賊に襲われていて、下手すれば命も危うかった。そのギリギリの所で海兵のお兄さんが助けてくれた。

私は助けられた身で、大人である海兵さんに従わなくちゃいけない。それは、分かってる。


…分かってるけど、だ。

私は海賊船に乗ってる。しかもシャンクスはちょっぴり有名人らしい。そしてお兄さんは海兵。…どう考えても、私の立場が危険なのは自明の理に決まってる。


だから私は、海兵のお兄さんに私の事がバレる前に帰らなくちゃいけない。

もしも赤髪海賊団の一員だって知られたら、さっきの海賊みたいに襲ってくるかもしれない。


……それは、怖いし、嫌だ…。



｢嬢ちゃん、訳あり？｣

｢――……｣

｢…ま、別にどうでも良いか｣



海兵さんの質問に、もしかしてバレたんじゃないかと思ってドキリと心臓が跳ねる。

幸い向こうもそこまで興味はなかったのか早々に話を終わらせてくれたけれど、改めて素性を伝える訳には行かないと決意する。


海兵さんの前では、私はただの子供。
海賊に襲われてた被害者で、無害な一般人。


心の中で何度も唱える。
決してボロを出さないように、自己暗示をかける。



(大丈夫…大丈夫)

(……)

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