十三話 ページ16
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ウタ、は……
私よりも幼い妹を心配し、視線を落とすとぷるぷると震えている紅白の後頭部が目に入る。
私がちゃんとこの子を見ていればと後悔する一方で、同時に良かったとも思った。ウタに赤を見せずにいられたから。
あの断末魔のような叫びも、吐き気を催すような匂いも、大好きな父親が人を殺したという事実も、何もかも隠すことが出来たから。
私だけが、知っていれば良いから。
「お前達…アレだけ部屋で大人しくしてろと…!!」
シャンクスが怒っている。
当然だろう、私は姉としての役目を果たせずウタを危険な目に遭わせ、約束を破ってしまったんだから。
「お頭、落ち着け。ひとまず敵は片付けたんだ」
シャンクスの怒鳴り声に二人で体をビクつかせている時、助け舟を出してくれたのはベックだった。
どうやら他の海賊は全員やっつけたらしく、ベックの言葉に反応して甲板を見れば確かに皆後始末をしていた。
……一瞬、ベックや他の皆もシャンクスと同じように相手を殺したんだろうかと、そんな考えが頭をよぎった。
ベックはシャンクスの怒りを鎮めようとするけれど、シャンクスはベックをチラと見た後再び私達に目線を落とし言葉を続ける。
「俺があと一歩遅けりゃどんな目にあってたか分からねェってのにか?結果的に二人共無傷だったが、それなら良いってお前は言うのか?」
どんどん、怒りが増しているのが分かる。
もしも誰も私達の存在に気づかなかったら殺されていたかもしれない。人質にされて皆の迷惑になっていたかもしれない。シャンクスの言葉はごもっともだった。
けれど、そんなシャンクスの様子を見てベックはため息を吐き、そして口を開いた。
「…だったらお頭はこの光景を、まだ10にも満たない子供に見せ続けるのか?」
「……」
「気持ちは分かる。だがまずは頭を冷やせってんだ馬鹿」
「…悪い」
シャンクスは未だに腰を抜かして一歩も動けない私達を両手で抱き抱えると、元の部屋に向かってゆっくりと歩き出した。
その手つきは今まで見てきた優しい父親そのもので、さっきまで殺伐とした雰囲気が嘘だったんじゃないかと錯覚してしまうほどで。
でも、シャンクスに仄かに残った錆の匂いがアレは嘘じゃないと証明していて、やはり赤髪海賊団への畏怖の念を抱かずにはいられなかった。
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マシロ_mashiro(プロフ) - 太陽さん» コメントありがとうございますm(*_ _)m 大学生活も落ち着いてきたのでまた書き始めました。ゆっくりではありますが更新頑張ります! (4月12日 9時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - ぴよラムネさん» コメントありがとうございます!こちら白ひげ海賊団ルートとはまた一味違った海軍ルートとなっております。なるべく早く更新出来るよう頑張ります! (4月12日 9時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよラムネ(プロフ) - コメント失礼しますー!私を見て欲しかったを読みたくなって探してたらこの作品に出会いました!!別ルートがあったなんて…!更新頑張ってください!続き楽しみにしてます!! (4月12日 0時) (レス) id: 4c4725f70b (このIDを非表示/違反報告)
太陽(プロフ) - 更新されてる!!めっちゃ待ってました(●´ω`●)更新がんばってください! (4月12日 0時) (レス) @page36 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - シアナさん» コメントありがとうございます!大変お待たせしてしまってすみません。ストックが少ないので前より更新ペースは落ちますが、これからも本作品をよろしくお願いします(*´▽`*) (4月11日 21時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マシロ_mashiro | 作者ホームページ:http:
作成日時:2023年9月3日 16時