五十三話 ページ19
・
その日の夜、ウタの希望で同じベッドで寝る事になった私は部屋を訪れ、この十一年間白ひげ海賊団で経験した‘‘家族’’との思い出を語った。
二年前までは末っ子として甘やかされ、それ以降は同い年の弟が出来て再び‘‘お姉ちゃん’’になった事。ツナツナの実が使いこなせるようになってリボンで色々出来るようになった事。訳あって今は船を離れしばらく戻れない事。
そして…
｢私ね、やっとウタの気持ちが分かった気がするの｣
｢…｣
｢今は役割を持ってるけど昔は何も無くて、何も出来なくて、とっても自分が情けなかった。だけど唯一無二の役目を与えられてから景色が変わった気がしたんだ。
ごめんねウタ。もう遅いけど、私はウタの事を何も分かってやれなかった。自分だけが被害者なんだって、ずっと思ってた｣
久しぶりに会った義妹の姿は何も変わっていなくて、中身も含めて昔の姿がそのまま成長したかのように感じた。
歌が大好きなのも、甘えん坊さんなのも、寂しがり屋さんなのも、口では｢嫌い｣って言ってるけど今でもシャンクスが…赤髪海賊団が大好きなのも、全てがあの頃のままだ。
言葉を発している間、ウタが何を思っているのか知るのが怖くて私はずっと下を向いていた。
外で道を歩いている時は互いに何も考えずに談笑出来たけど……今は、分からない。
謝罪の言葉を述べた後もずっと下を向いていると、不意に頬をむぎゅっと掴まれたかと思うとグイッと強制的にウタと目を合わされる。
その瞬間、あぁ、きっと怒ってるんだろうなぁと思って覚悟を決めた…けど、ウタの表情は怒りでも恨みでも反発でもなく…眉尻を下げて、口を開いた。
｢謝らないで、A｣
｢ウタ？｣
｢私ね、エレジアに置いてかれて、一人ぼっちになって…やっと、Aの言ってた事を理解出来たの｣
言ってたよね、‘‘ 確かに私はウタよりも出来る事が多かったかもしれない。でも、それを褒められた事は一度もないよ。全てがお姉ちゃんだから当たり前って言われてきたんだから’’って。
‘‘今は分からなくても、いつかきっと理解する時が来るよ’’って。
そこまで言うとウタは頬から手を離し、寂しげに笑った。
｢誰にも見て貰えない、声を聞いて貰えないって、こんなに寂しいんだね｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1249人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マシロ＿mashiro(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます！やっぱり仲違いしたままは後味が悪いですもんね。最後までご愛読ありがとうございました(*´▽｀*) (5月8日 7時) (
レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - コメント失礼します！ 一気読みしてしまいました。最終的にそれぞれの、気持ちを話し合って和解できて良かったなって思いました。とても、面白かったです！！ (5月7日 23時) (レス) @page50 id: 18462604da (このIDを非表示/違反報告)
マシロ＿mashiro(プロフ) - 文ストオタクの一般人さん» 過保護になりすぎないように執筆していたはずなのにいつの間にか…妄想って怖いですね笑、どんどん拡がっちゃいます。ご愛読ありがとうございました！ (2023年3月14日 16時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 皆過保護だけどマルコがｗｗめっちゃ良かった！、、、です！ (2023年3月14日 8時) (レス) @page47 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ＿mashiro(プロフ) - 桔梗さん» そう言っていただけると執筆したかいがありました！最後までお付き合い頂きありがとうございます！！ (2023年2月10日 18時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マシロ＿mashiro | 作者ホームページ：http:
作成日時：2023年1月7日 15時
