‘‘私’’を見て欲しかった【マルコ】

一話 ページ3

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｢さぁ、うちの音楽家のステージだ！｣



赤髪海賊団の皆に囲まれて、拍手や歓声を貰っているウタ。彼女の歌声は素晴らしいもので聞いた誰もが彼女に魅了される。


赤と白に分かれた髪にヘッドホンをした少女ウタはシャンクスの二人いる娘のうちの一人で、もう一人の娘である私はAをいう名前を貰い、ウタの姉を務めていた。


私達三人にそれぞれ血縁関係は無く、赤髪海賊団が敵船から奪った宝箱に入っていた二人の赤ん坊…すなわちウタと私を見つけたのが彼らとの出会いだった。



｢ウタは本当に歌が上手いな〜！｣

｢流石赤髪海賊団の歌姫だな！｣

｢そうよ、私は赤髪海賊団の音楽家ウタなんだからね！｣



ウタは皆の歌姫。元気で明るくて社交的、愛嬌も良くて皆に好かれるアイドルのような存在。だから赤髪海賊団の皆はウタのどんな我儘でもそれを叶えようとし、必要以上に甘やかす。


一方彼らから見た私はまだ幼いのにもかかわらず物静かで内向的だが聞き分けの良い子供であり、必要以上に強請って大人を困らせる事もなく、また妹の我儘に笑って付き合っている。


まるで本物の姉妹のように仲の良い私達を見て赤髪海賊団の彼らは私の事を本当に理想的な姉だと口を揃えて言った。



｢ねぇねぇA！その＿＿＿が欲しいの！頂戴！｣

｢……うん、良いよ。大切にしてね｣

｢ありがとうA！大好き！｣



子供らしく愛嬌の良いウタと何処か大人びていて手のかからない私。


常に笑顔をばら撒き周囲の人間を笑顔にするウタと常に微笑み周囲の人間にこの子は大丈夫だと思わせる私。


素直で我儘なウタと聞き分けが良く物欲が無い私。


赤髪海賊団の愛情がウタに偏ってしまうのは必然的で、いつしかシャンクスの｢また今度な｣という約束への期待も消えてしまっていて。私はお姉ちゃんだから仕方の無い事なんだと、今の境遇を受け入れてしまっていた。



｢…いいなぁ｣



理想の姉なら、聞き分けの良い子なら、妹を泣かせる事も父親と慕っているシャンクスを困らせる事も無く、赤髪海賊団の皆から ｢流石にお姉ちゃんだな。偉いぞ｣ と褒められるのだから全てが円満で良いじゃないか。



でも、でもねシャンクス。

私は、ウタとたった一つしか年が変わらない女の子なんだよ？


…少しぐらい、姉としてじゃなくて、私を見てよ。

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