＊・°.・ ページ13
「...Aさん、今日いらっしゃらなかったな。」
片付けを始めながら、俺に声をかけるエミさん。彼も久々に会えるのが楽しみだったのだろう、少し寂しそうな顔をしていた。
「せやな。なんか、、あったんやろか。」
なんだか無性に胸がザワザワした。
スマホも確認したが、どうしても行けなくなったとか、遅れるだとかいう旨の連絡もない。
「とりあえず、今日は閉めなあかんから外の看板畳んで持ってきてもろてええですか？」
「今片付けてくるな」
外へ出れば、店の前で何かを探す様にキョロキョロ見ている女の人がいた。その人は外に出てきた俺を見るなり、ハッと駆け寄ってくる。
「えっと、カフェのお客様でしょうか、今日はもう店じまいするとこなんですわ。申し訳ないです。」
「あの、、お客では無いのですが、黄瀬さんという方は今日はいらっしゃいますでしょうか。」
その女の人は、どうやら俺に用事があるらしい。よくよく顔を見れば、誰かに、似てる様な気がしないでも無いが、気のせいかも知れない。
「えっと、黄瀬はおそらく僕のことですね。」
そう答えるや否や、あぁ、と小さな声で零しながら女の人は俯き、泣き出してしまった。
「...突然おしかけ、本当に申し訳ありません。私、花野Aの母です。」
その言葉を聞いた瞬間、心臓をギュッと掴まれたかの様な気分になった。
「シャオロンさん〜、なんかありました？..........どちら様で...？」
俺がなかなか戻ってこない事を心配したエミさんが中から出てくる。
そして泣いているAのお母さんを視界に入れるとギョッとした様な顔をした後、ワタワタとしながらも空気を察してくれて、もし宜しければ中でお話ししませんか？と、3人でカフェの中に戻った。
片付けがほぼ済んだ、少し殺風景になった静かな店内。そんな静かな空間に、彼女の声を殺す様に泣く音が響いていた。
暫くして泣くのをやめ、俺たちに話し始めてくれた。
「今日こちらへお邪魔させていただいたのは、お二人にも、お伝えしなければならないと思ったもので、」
彼女の眉が下がる。本当に辛そうな、耐え難い事があったような、そんな顔をして彼女の口から出てきたのは、俺にとっては信じたくない、聞きたくない、想像もしていなかった言葉だった。
「娘は......Aは、三日前に、
.
.
.
亡くなりました。」
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作者名：くらげ。 | 作成日時：2020年9月19日 0時
