ふたりで、ひとつ-共犯者篇-幼少期〜日露戦争前 (ページ7)

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葬儀は粛々と執り行われた。

あの後母親に引きずられるように連れ帰られ、母の金切り声を聞きながらもう百之助には会えないかもしれないなと考える。

あの家にひとりにしてきてしまったな。

柄にもないことが頭に浮かびAは目を伏せた。
しかしあれで百之助が疑われることはない。
愛した男に振り向いてもらえなかったが故の自死。殺鼠剤が着物の袂から出たと分かれば近所の人も祖父母さえもそう思うはずだ。百之助の立場が悪くなることはない。
Aは満足気にこっそり口角を上げた。

葬儀には参列することになった。
世間体を気にする母のことだ。そうであろうと思っていた。おそらくこれで全てのほとぼりが冷めるまで外には一切出られないであろう。
ため息をつきながら母の後ろ姿越しに前を見ると、百之助が軒下で何やら参列者の一人一人を見上げている。

なるほど。父か。
死んでしまっては会わせたとて意味がないではないか。
それとも、もっと違う目的か。どうにも百之助は期待する癖がある。6.7つほどの子供だ。Aも同い年なのだから当たり前なのだが、Aはとうの昔に期待というものとは疎遠になっていた。
Aはもう一度ため息をついた。

母と父が百之助の祖父母やご近所と話し込んでいる。
Aはそれを遠目からぼんやりと眺めた。
突然くいと着物の裾を引かれる感覚と共に坊主頭が着物を引っ張りながら走り出す姿が見えた。と同時にA自身も引っ張られるまま走り出す。

また怒られる。そんな思考が頭をよぎったがどうせ最後だ。
もう大切なものなどありはしない。もう何も誰も奪うことなどできない。存在しないものを捨てることなど誰にもできないのだから。

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忘備録

Aの家は過干渉の家庭です。
子供はAしかおらず、全ての干渉はAに向いています。
Aは母の意にそぐわないことがあると大切な本や宝物、友人を全て取りあげられ、何も期待しない子に育ちました。

知っておいていただけると、このお話のAがなぜこのような考え方をするのかわかりより楽しんでいただけるかと思います。

ツグ