ふたりで、ひとつ-共犯者篇-幼少期〜日露戦争前 (ページ4)

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季節は移り変わる。
春が来て、夏が来て、秋が来て、また冬がやってくる。

Aは河川敷で百之助をぼうと眺めながら、冷えるな、とふと思った。
鳥の首根っこをいつものように捕まえながら百之助が隣に座る。

まだ息は白くない。それでも体の芯を冷やすのには十分であった。

「寒いのか」

百之助に問われAは二、三度瞬きした。
Aたちは必要な単語しか話さない。世間話などしない。
ただ、空を見上げて、鳥を撃ち、Aの隣に百之助が座り、夕飯の時間になると帰る。

「おててが、冷えた」

Aの口から、幼児のような声がポツリと呟かれた
母が機嫌が良い時はよくおててが冷えるからと火鉢を用意してくれることを思い出す。

百之助は数秒ほど瞬きすると、そっとAの手を己の手で包み込んだ。
百之助も触れれば温かいのか。
そんな当たり前のことを考える。ふと、これでは百之助の手の外側も冷えてしまうなと思った。

Aはそっと百之助に身を寄せると己の三角座りの太ももと腹の間にその手をおさめる。

「温かい」

こうすれば温かいだろうと、そんな長々と喋らずとも百之助には伝わる。
伝わるようになってしまった。

一刻ほどの時間を毎日、Aたちは共有する。
じんわりと混ざっていくような不思議な感覚がAの腹を満たした。