山猫の女 side 月島 ページ30
随分と遅くなってしまった。時刻はもう丑三つ時に近い。
上官に頼まれた用事を済ませ、月島は足早に隊舎に向かっていた。
今日はもう風呂は諦めるしかあるまい。
沈んだ思考を止めて、ふと立ち止まる。
「....っ....ちまえ...」
「お....そっ...おさえろっ！」
八百屋の横の裏路地で何やら蠢いている。
月島は慎重に近づくと壁に隠れてそちらに目を凝らした。
男たちが女を取り押さえている。女は足をバタバタと抵抗こそするが声を上げない。驚いたのは男たちの服装は月島たちの身につけている軍のそれである。
「おい！何をしている！」
男たちは驚いたように振り向くと女を突き飛ばし裏路地を駆け出した。
「おい、待て！」
追いかけようと一歩踏み出したところで気づく。
黒髪がサラサラと地面に流れている。
月島はそれを見たことがあった。
「おまえ...銭湯の時の...」
女はゆっくりと起き上がり、口元の血を拭ってにぃと笑った。
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月島は、塀の家の上り框に女を座らせた。
「夜分にお邪魔しております！」
古着屋の老人の家で暮らしているというのだからご老人もいるかと思ったが中に人の気配はない。
女は体が痛むのか少し呻き声を上げるとその場で寝転がった。
「ちゃんと着替えて布団で眠れ」
女は動かない。呼吸で胸が上下しているところを見ると生きてはいるようだ。着物がそこまで肌けていない。未遂のようであった。不幸中の幸いだ。
月島はため息をつくと女を抱き上げ靴を脱いだ。
部屋は閑散としている。座卓の上に着物が何枚も重なっている以外には何もないような居間であった。
女を座らせ、押し入れから布団を取り出す。
女をそこに寝かせると月島はため息を吐いた。
「なぜ夜に出歩いていた」
女はゆっくりと上半身だけ持ち上げて月島を見つめた。
「ねむれなかったから」
幼子のような言い訳に月島は、はっ...と目を見開く。
「危ないだろう」
至極真っ当な意見であった。他にも言わねばならぬことは沢山浮かんだがまずはそこからだ。
女は何も答えなかった。
月島は辺りを見回す。そろそろお暇しなければならない。ご家族がいるとはいえこんな深夜に女の家に上がり込むことなど。
ふと、居間の隅に丁寧に畳まれた軍服が目に入る。
闇に慣れてきた目をさらに凝らすと肩章に27の数字。
「お前...第27聯隊の誰かの奥方か？」
「百之助を知っているの？」
ひゃくのすけ。この女、百之助と言ったか？
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プスメラウィッチ(プロフ) - 初めまして、出来ればハッピーエンドして欲しいです。後、尾形百之助を生きて欲しいです。夢主と尾形百之助は幸せいて欲しいです。続き頑張って下さい。応援しています。 (6月26日 12時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ツグ | 作成日時：2023年6月24日 9時
