ふたりで、ひとつ-共犯者篇-幼少期〜日露戦争前 (ページ22)

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兵卒の休みは日曜であるようだった。
尾形は日曜の朝になるとふらっとやってきてAが仕立てた着物を古着屋に持っていく。

その金でAに必要なものをどこからか調達してきては、満足げに自身の頭を撫でるのだ。

最初尾形はAに金を握らせ必要なものを買うように言った。Aはずっと幽閉も同然の生活を送り世間知らずであったため、一人で買い物すらできずむしろぼったくられそうになったため、こうして尾形が手を焼いているのであった。

Aができることと言えば庭掃除である。
Aは適当に雑草をぶちぶちと抜くと、次第にその草花で王冠を作り始める。腕輪、指輪、王冠、鳥を模した何か。縁側にひとつつづ並んでいくそれに、いつの間にやら買い物から帰った尾形はぼうっと口をあけた。

「お前な...」

尾形は縁側に胡座をかいて昼寝を決め込むことにしたようであった。

人の行動などそう簡単には変わらない。勉学や料理、掃除、裁縫、この一通りしか教わっていない。外の世界でどのように立ち回るべきかAは知らない。

こうなってはいけません。母から教わった駄目な生き方を尾形とAはなぞっている。

Aは縁側に並ぶ作品を満足げに眺めると、それらを一個一個塀の上に並べていった。

懐かしさがAの脳裏を掠める。
どんなに自己を否定されようともAは負けなかった。
あの柵の上に時折置かれるあの花が、Aを外の世界へと繋げてくれていた。

罪悪感、背徳感、ぐちゃぐちゃになった感情を持ち合わせながらAは母の殻を破ろうとしている。

そううまくはいかなくても。
人はいつか成長するようにできている。