ふたりで、ひとつ-共犯者篇-幼少期〜日露戦争前 (ページ2)

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Aは縁側からの景色しか知らない。
いつも柵の上の空を見上げていたから、その小さな空の色しか思い出すことができなかった。

外に連れ出されることはあれど、隣には常に母親がおり世界は白黒に見えた。

ザッザッと地面を擦る音がして、またもや柵の外から小さな坊主頭が見える。
夕飯の時間まで一刻ほど。Aは柵の抜け穴に身を潜らせた。

少年はこちらをちらりと見遣るとふいと正面を向いた。再び歩き出す。Aも三歩ほど距離を空けて歩みを進めた。

河川敷に穏やかな空気が流れている。
少年はいつものように猟銃を下すとさらに構えた。
Aは距離をとって地べたに座りその姿を眺めた。

そろそろあんこうの時期も過ぎる。そうすれば撃たれた命たちもこの少年の家族の糧になるだろう。Aは思案する。そうなれば、この少年も少しは笑うのだろうか。現実はどこまでも現実だ。鳥をおっかあが口にしようとも来年の冬には同じことだ。

1匹の鳥の首根っこを掴んで、少年がこちらに向かってくる。
前のようにむんずと鳥を差し出してくるかと思ったが、その憶測は外れ少年はAの横に腰を下ろした。

「なんだ。」

少年はこちらを見ることもなくそう尋ねる。
どうしてついてくるのか、ということだろうか。
Aはそういえばと思った。
同情も何も思い浮かばなかった。この撃ち落とされた鳥のように命はいつか終わる。その時になれば全ては何もなかったのと同じなのだ。