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教室に水筒を忘れた。そう気づいたのは、部活が始まってすぐのことである。最初は、口渇を満たすためだけなら剣道場付近の水道でいいと思っていた。
しかし、いつも以上のハードな練習と
乾ききった喉を通る鉄臭く生温い水の不快感と
ほんの少しの、気がかりな幼馴染の存在と
それらがたまたま重なり、練習開始から1時間もたった後に教室へ足を進めた。
汗ばんだ剣道着が身体に張り付き、思わず顔を顰めながら独り校舎の廊下を歩く。どのクラスもまだ数人教室に残っているようで、時折女子の高らかな笑い声が響き渡る。
そんな中、アイツもう帰ったかな、どうせまだ残ってやってんだろうな、などと自然に口角が上がる。傍から見れば、剣道着でニヤニヤと頬を綻ばせた気持ちが悪い男だろう。
しかしそんな考えさえも、自分の教室の明かりが灯っているのが見えたことで、すぐに脳内はアイツの色で侵食され薄れてゆく。
さて、からかった後にでも少し教えてやっか。
ドアを開けてからのことを想像して、再び笑みがこぼれる。七瀬が既に帰ってしまった、という発想はないのかと問われれば、それはないと断言出来る。
あいつが普通にやって、1時間で追試に合格するわけがない。それ程までに零落した彼女の英語力は、きっと職員室内でもブラックリストに載る程だろうなと思う。……まぁ、逆に俺の国語力は、あいつの英語力とタイマン張るレベルだが。
それ故、確信を持ちながら教室の後ろ側の戸を乱雑に開くと、案の定目に飛び込んでくるのは驚愕の色を浮かべた端麗な顔。無意識に高鳴る鼓動のせいで、言葉は口を衝いて出る。
「七瀬、聞いてくれよ。俺忘れ物しちゃっ……」
そこまで口が動いたところで、ようやっととある人物の姿を捉えた。
七瀬の前……俺の場所に座るソイツは。
物理的な距離ももちろんだが、普段レトルト同様に普通の人に壁システムを発動するはずの七瀬との距離感を全く感じさせない。
……気に食わねぇ。
「……何してんだよお前ら」
1オクターブ低くなるレベルの声に、自分でもやべっと思う。だが、返ってくるのは嘲笑うかのような声だった。
「何って、勉強教えてやってるだけだわ。うっしー何本気でキレてんの？」
挑発的なその態度に眉をひそめていると、追い打ちをかけるが如く「まぁ、Aはもう受かったし俺らこれから帰るとこだけど」と立ち上がった。
様々な感情が錯綜し、声も出せずにいる俺の耳に
「じゃ、帰るかA」
と響いた。
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琥珀糖。(プロフ) - ららさん» 温かいコメントありがとうございます！ よかったです、、頑張ります！ (2020年3月1日 17時) (
レス) id: 0adfd00f15 (このIDを非表示/違反報告)
らら - やばいです、！きゅんきゅんします！頑張って下さい応援してます！ (2020年2月18日 23時) (レス) id: 55f78e88a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖。(プロフ) - まめさん» 閲覧ありがとうございます。嬉しい限りです、、！ 頑張らせていただきます！ (2020年1月20日 18時) (レス) id: 0adfd00f15 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖。(プロフ) - ゆなさん» そう言っていただけるなら本望です……！嬉しすぎました、、ありがとうございます。 (2020年1月20日 18時) (レス) id: 0adfd00f15 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 初めて読みましたが、少ししか読んでないのにハマってしまいました^ ^ (2020年1月20日 12時) (レス) id: 2a8b718fbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀糖。 | 作成日時：2020年1月16日 18時
