彼女の異能、不明。 (ページ5)

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それから、次から次へと自己紹介が始まる。
しっかり者の国木田さんを初め、
優しい雰囲気の谷崎さん。
その妹のナオミさん。
癒し系男子の賢治さん。
あまり掴み所のない乱歩さん。
美人だけど姉御肌な雰囲気の与謝野さん。
そして、包帯無駄遣い装置(？)の太宰さん。
……ふむ。成程。

『太宰さんは包帯無駄遣い装置なんですね。』

太宰｢ちょっと待って。国木田君の云う事をそのまま鵜呑みにしちゃ駄目。」

国木田｢包帯無駄遣い装置であっている。｣

太宰｢ちょっと。｣

……何か楽しそうだな。太宰さん。
私は其の様子をほけーっと眺めている。
そういや、私まだ自己紹介してないじゃないか。
自己紹介をしようにも、肝心の名前が思い出せない時点で不可能だが。

『……私は、身元不明・正体不明の記憶喪失少女です。』

谷崎｢そんな自虐的にならなくても……。｣

谷崎さんは私に気を遣ってそう云ってくれたのだろう。

『いや、事実ですし。』

でも、事実なのだ。これだけは確かだ。
自分の名前も無いのだから、自虐的でも何でもない。事実を述べているだけなのだから。

太宰｢じゃあ、君の名前はAでどうかな？｣

と、太宰さんはいきなり私にそう云ってくる。
しばらく、私は思考が停止していたが、すぐに返事をする。

『……なんでしょうか。Aって、とても懐かしい感じがします。』

そう、太宰さんの提案してきた名前は、どことなく懐かしい感じがする。
どうしてかは、分からない。

けど、分からないものを考えても意味が無い。
じゃあどうするべきか。

『……その名前、つかわせて頂きますね。』

名前を貰うしかないだろう。