殺人鬼さんの過去と今【神威】

＿二百二十二訓 ページ31

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夫婦として間違えられた二人。言い直すのもめんどくなくなりそうですと答えたAの顔は無だ。
昨夜は相手の善意で泊まってけと言われたものの、抜け出したのを思い出す。


「…それにしてもこの星は、いい所だな」


娘の働く店にて、出された湯呑みを片手にAはぽつりと呟いた。
暖かくて、笑顔が多く、優しい人に囲まれる。


「田舎町だけど、素敵な所でしょう？」


お盆を持って微笑む彼女に、Aと松陽は目を細めた。


＊＊＊


「それが…、まだ生徒が一人もいません」
「は？」


松下村塾について彼女が問えば、まだ塾の場所も塾生も揃ってないと。ハッキリと言い張る松陽にさっきまでの自信満々なあの教師ヅラはなんだったのだと、にっこり笑う男をジト目で見つめる。
ただ、今は旅を続けているらしい。


「なら次きた時は塾生を紹介してもらわないとな」


ずずっとお茶を喉に流し込みなが仕込むA。彼女のその言葉にきょとんとしていた松陽はニコリと微笑む。


「…はい、Aにも教えてあげますよ」
「私は教える側だ馬鹿」

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