_二百八訓 ページ17
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それから、女_Aがハルの住む街に繰り出すことは何度もあった。
……何百年ぶりと食べて食べ物は、ハルの手作りだからか、それとも人間に囲まれてからなのか。
「……、美味しい」
Aが思わずポロリと声を零すとハルは嬉しそうに良かったと微笑んだ。
後から出された真っ赤な林檎はハルの好物だと知り、次第に女は森の奥の住処で一人食べるようにもなる。
「あら、ハルくんとこの。こんにちは」
「…どう、も」
街の人とも顔見知りになり、いつしか出会った少女とも再開。暖かい人々に囲まれ、女の濁った瞳からは光が増す。
「お姉さんにあげるー!お花の冠!」
「ふっ、ありがとう」
そして、少しだが微笑むようにもなった。
「Aちゃんもこんな男に捕まって大変だなァ」
「父さんッ…!」
「……、」
病弱な父親の話は聞いてはいたが、ここまで寝込んでいるとAは聞いていなかった。
白髪混じりの男は玄関のドアにもたれ掛かり外の空気はいいと背伸びをしていた。
「動くと身体に響くぞ年寄り」
「たくよォ、俺だって伊達に夜兎やってんだぞ?なんでこんな周りの奴らは過保護なんだか」
ハルによって強制的にベッドへ連れ戻されたハルの父親はもう少しゆっくりしたかったと悔しがる。
「…にしてもなァ、俺の血を引き継いでるわ」
「何の話だ」
「女の趣味。面食いなとこ」
Aは訳が分からないと首をかしげる。彼女のそんな姿を見て、父親は目を細め窓の外を見た。
「こんな動けねぇ親父の面倒見てくれる優しい息子、誰に似たんだか」
「明らかにお前には似てないだろうな」
「Aちゃん言うようになった」
「ちゃん付けするな」
「…初めの頃は口もきかなかったのに」
「聞いてたか?」
ベッド横の椅子に腰を掛け新しく手に入れた本に目を通す。
「ハルを、頼んだぜ。死ぬまでな」
「…………ん、」
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美結菜 - とても面白かったです!完結おめでとうございます! (2023年2月8日 11時) (レス) @page48 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
Chaos(プロフ) - 長編お疲れ様でした。ありがとうございました。 (2022年4月17日 5時) (レス) @page49 id: 679f50534d (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 泣いた~誤字ちょくちょくあったけど内容とても面白かったです (2022年2月16日 8時) (レス) @page49 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 - 新連載楽しみにさせていただきます。これからも頑張ってください! (2021年9月22日 16時) (レス) @page45 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 - 完結おめでとうございます(*^▽^)/すぐに読みたかったんですがなにせ中間テストの期間に入ってしまい見ることができませんでしたが、やっと見ることができました。久々なので見返しますね。改めまして完結おめでとうございます。 (2021年9月22日 16時) (レス) @page45 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なな | 作成日時:2021年5月26日 1時