_百六十三訓 ページ20
.
「おお、着いた着いた」
「…………」
前には見知った光景が広がる。ついこの間帰ったばかりだと言うのに、あまり好まない大きな商店街どおりの入口を目にして団長は目を輝かせていた。
横には大きな荷物を持ち、飲食店を探し始める団長のあとを追いかける副団長の姿が。
あぁ……、何でこうなってしまったのだろう。そう思い返せばほんの数日前の事だった。
***
Aさーーーん!!とこの間のことがなかったかのように話しかけてくるモブを見てこちらの気が引けたが、いつも通り聞いてやれば随分と慌てた様子だ。
「あの、アイツらが宇宙旅行の招待券が明後日だって言っていて…」
「ほォ、じゃあその事を知らない団長に黙っておけばこれは破談になると」
「そうじゃないですよ…。いや、一人があれはサンタさんからの贈り物だから誰でもいいから俺の夢を持っていけ!って話を聞かなくて」
「熱が上がって頭がおかしくなったのか」
可哀想などと他人事のように聞き流すが、もう遅い。彼の後ろにはいいこと聞いちゃった。とでも言いたげな団長の姿があった。
***
「はぁーーッ…」
「随分と乗り気じゃねェな。お前こういうの好きそうだろ」
「今この状況でなければ存分に楽しめただろう。よりによってなんでこの星なんだ」
あまりこの商店街には近づきたくない。人通りも多いし私の服装、髪色は目立つ。それに大柄な副団長とあちこち歩き回る団長がいるんだ。無理無理。
先に止まる宿にでも一人でいようか。そう思ったが既に遅い、団長にガッツリフォールドされた左腕。
離そうと思えば離せられるがあんな珍しい顔をされてこちらを見られてはたまったもんじゃない。
「……ま、いいか」
今だけ。今だけ団長のわがままでもなんなりと付き合ったやろう。
「ほら、副団長早くしろ。置いてくぞ」
「こちとら三人分の荷物持ってんだよ。おじさんには優しくしろ。せめて自分のは持て」
「…………」
「無視するんな、すっとこどっこい!お前さんのが一番重いんだよ!オイ、聞いてんのか!?」
143人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuuna1202(プロフ) - 本当ですか!嬉しいです!! (2020年12月8日 11時) (レス) id: 1a3b3ba982 (このIDを非表示/違反報告)
yuuna1202(プロフ) - 私この小説を応援してます!補佐さんが呪術廻戦に転生するのも見てみたいなと思います!? (2020年12月7日 19時) (レス) id: 1a3b3ba982 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なな | 作成日時:2020年7月17日 23時