_四十一訓 ページ42
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くしゅんとAのくしゃみを聞くと高杉は羽織っていた物を彼女の肩にかけた。
「今日は随分と優しいな」
「なんとでもいいやがれ」
Aに向かって笑う高杉。これはいつも見せるニヒルな笑なのか、それとも……。
ふと、甘い匂いがして立ち止まる。そこには1件の団子屋が。
「…入るか?」
「いいの?」
__高杉はAには甘い。いつか誰かに言われた高杉は反論出来ないことを今自覚した。
店に入ると店主が出てきていっらっしゃい出迎えた。
「何が食いてェ」
「んー…、ごまとみたらし」
「ごまとみたらし四本づつ」
繋がれた手を離し財布を出そうとするその腕をつかみこれは姉さんの奢りと言った。
「……何が姉さんだ」
「甘える時は甘えろ。それに着物とその重い荷物を持ってるお礼も兼ねてる」
そこまで言われると引くしかないと今回ばかりはAの言う通りにした。いや、今回だけではないか。
渡された団子は頼んでいた数より少し多い。それに気づいて店主を見ると美男美女夫婦だからまけといたなんて豪快に笑った。
場所を移動して近くの桜の木の近くのベンチに座り、みたらしを頬張っていた。
「晋助は食べないのか?」
「甘いもんは好きじゃねェ」
「そんなんじゃ身長伸びないぞ」
「…団子なんかで伸びてたら毎日食ってたさ」
煙管を吸っている高杉と隣で桜を見上げながら団子を口にするA。
「昔と逆だな」と小さく呟くと高杉はチラリとこちらを向く。
「松下村塾時代、縁側で桜を見ただろう?その時と逆だなって」
「私が煙管を吸って晋助はヤクルコを飲んでた」と昔の思い出。
あの時高杉は珍しく夜中眠れず、水でも飲みに行こうと歩いていると縁側で座って桜を見ながら煙管を持っているAがいた。それがきっかけでよくAに懐いたらしい。
「……さァな。昔のことなんざ忘れた」
「…約束は覚えてるのに?」
「約束だァ?」
「この間Aに凄い似合いそうな青い着物があったんだ」
「ほォ、それは見てみたいな」
「……ぃ、いつか着せてやる」
「はてさていつになるんだか」
「俺が大人になったら。だからそれまで……。」
「__隣にいて欲しいだったか?」
「……あの女」
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水渚桃華 - 七瀬未来さんへ まだ少ししか読んでないですがこの作品面白いです。更新待ってます。 (2020年2月20日 17時) (レス) id: 3a85905bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なな | 作成日時:2020年2月18日 19時