126話 聞きたいこと ページ38
「えと、その、お姉さん? は」
「隣のおねえちゃん!」
「お姉さんは」
「強情〜!」
「お姉さんは、プロ忍……なんですか? あと…………豆腐、好きですか?」
質問に彼らの気の糸が張ったものの、すぐに緩む。
私や学園長先生も含めたみんなが「だあぁ」と言わんばかりにコケている中、質問した張本人の兵助だけは真剣な面持ちでお姉ちゃんを見つめていた。
なんなら、豆腐の質問が本命ですとその目が語っていた。
「そうねぇ、豆腐はそこそこ好きよ。冷奴派か湯豆腐派かといったら冷奴派」
兵助の顔がパァと効果音がつきそうなくらい輝いた。
そのまま喋り出しそうなのを勘右衛門と雷蔵がそれぞれ片手で肩を掴んで引き留めた。
「あと、私は“元”プロ忍。二年前にいろいろあって辞めたの」
不味いことを聞いてしまったか、とみんなの顔に罰が悪そうな色を少し浮かんだ。
これは確実に勘違いされているな。
お姉ちゃんの顔も、どこか悲しそうな遠くを見るようなもののため尚更だろう。
するとお姉ちゃんもこの重たい空気を感じ取ったのか、慌てて手を横に振る。
「違うの! その〜〜〜、ね? 忍務の最中にやられた、虫遁術が……トラウマになっちゃってね……? 私……」
あげられたみんなの顔にはハテナが浮かんでいた。
「私…………虫が大の苦手なの〜!!」
こんどは八左ヱ門の顔がズウゥゥンと効果音がつきそうなくらい暗くなった。
『ほんとなんで辞めたのか……お姉ちゃん強いんだし……お父上とも大喧嘩だったじゃん』
「まあねぇ。でも私は今のお仕事がそこそこ好きよ?」
そりゃいいことだろうけど、と呟いてため息をつく。
ちらと学園長先生を見ると、ヘムヘムに肩をもんでもらっていた。
あの、と三郎が手をあげる。
三郎含め四人がなにか聞きたそうな顔をしていた。ちなみに八左ヱ門はまだ少し落ち込んでいる。
あと兵助の「聞きたいこと」はたぶん他三人と違うだろう。
「まだ伺いたいことはたくさんあるのですが、お姉さんはなぜ忍術学園に?」
空気がまたピンと張り詰めたものになった。
その質問にお姉ちゃんは「あらあらそうだった」と手をひとつ叩き姿勢を正す。
そして微笑を浮かべながら私を真っすぐに見て、
「Aちゃん。悪いニュースと悪いニュースと、あなたにとっては悪いであろう報告、どれから聞きたい?」
と言った。
260人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ひぃん暖かいお言葉ありがとうございます!私生活が落ち着きつつあるので、また更新頑張ります!なにとぞお付き合いを…… (2022年4月19日 19時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - これ面白いです!!! 作者さん無理のない範囲で頑張ってください☺️ (2022年4月19日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - れなさん» ありがとうございますっ!!遅くなってしまいすみません_○/|_ そのお言葉が本当に励みになります。やっとこさ私生活が落ち着いてきたので、期待に応えられるよう更新頑張ります。本当にありがとうございます!しょもしょもしてた心の恩人です! (2022年4月19日 18時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高に面白いです、、完結までついていきます!!更新楽しみにしています! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!!あいさんのそのお言葉が栄養分となります。なめさん更新ですが、何卒よろしくお願いします! (2022年1月20日 20時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:炭火焼きりんご | 作成日時:2021年4月25日 19時