124話 一年生にしては難しい ページ36
「あっA先輩! あの、いまお時間よろしいですか?」
自室にいた乱太郎への用事を済ませて昼休みの校庭の喧騒から少し遠ざかった一年長屋を通りがかると、まだ声変わり前のそれに引き留められた。
そちらに目を向けると、私を呼んだ佐吉と伝七、そして彦四郎と一平がいた。
昨日の任務で今日の授業は免除されているため、時間はあり余っている。
『いいけど、どうしたの?』
「授業で分からないところがあって、教えていただきたいんです」
『なるほど。どこが分からないの?』
お邪魔します、と一言ことわって部屋に入る。
見せてもらった箇所はたしかに一年生にしては難しい内容で、一のいは進んでるな、と内心関心した。
机の上には図書室から借りてきたのであろう、この範囲に関連する数冊の本が積まれている。
『ここはねぇ……』
外からのじっとりとした視線には気づかないフリをして教鞭を執る。
教えている中でもそりゃ質問は出てくるわけで、ひとつひとつ疑問を解決しながら少しずつ進めていく。
一番質問が多く出たのは佐吉と伝七かな。
しばらくすると、
「Aここにいたのか。探したぞ」
と、三郎が戸に手をかけて訪ねてきた。
『三郎、どうしたの?』
「学園長先生がお呼びだ。客だと。ついでに俺らも同席しろってさ」
『ふぅん? まいいや、分かった』
じゃちょっとごめん、行ってくるね。と一年生四人に声をかけると、「はいっありがとうございました!」と元気な返事が返ってくる。
『残りは、その……外の木に隠れてらっしゃる安藤先生に教えてもらいな』
「「「「え? …………あっ!」」」」
そう。感じていたじっとりとした視線は安藤先生からのだ。心なしか歯ぎしりも聞こえてくる。
大方、たまには生徒にかまわれたくてわざと難しい箇所を授業でちらと教えたのだろう。
いつも一年い組の子たちはその勤勉さゆえに自力で解決しているんだろうから。
「そういえば先生……まだ分からなくてもいい範囲ですが君たちならできます、分からない時は身近な大人を頼るのも手ですよ……って口早におっしゃっていたような……」
彦四郎が小さな声で呟いた。
で、その思惑が外れて、いつまで経っても質問が来ずいまかいまかと待ち受けていれば質問されたのは私で嫉妬した……ってところだろう。
事情を察したらしい三郎が、くっくっと喉の奥で笑う。
その脇腹を軽く小突いて、じゃねと手を振って学園長先生の庵へと私たちは歩き始めた。
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炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ひぃん暖かいお言葉ありがとうございます!私生活が落ち着きつつあるので、また更新頑張ります!なにとぞお付き合いを…… (2022年4月19日 19時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - これ面白いです!!! 作者さん無理のない範囲で頑張ってください☺️ (2022年4月19日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - れなさん» ありがとうございますっ!!遅くなってしまいすみません_○/|_ そのお言葉が本当に励みになります。やっとこさ私生活が落ち着いてきたので、期待に応えられるよう更新頑張ります。本当にありがとうございます!しょもしょもしてた心の恩人です! (2022年4月19日 18時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高に面白いです、、完結までついていきます!!更新楽しみにしています! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!!あいさんのそのお言葉が栄養分となります。なめさん更新ですが、何卒よろしくお願いします! (2022年1月20日 20時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炭火焼きりんご | 作成日時:2021年4月25日 19時