112話 元気なお返事 ページ24
『…………』
手元の簪をじっと見つめる。
これを見ると、母上の形見を思い出すんだ。深い青一色のトンボ玉がついた簪。
あの人が真っ赤な顔してこれを渡してきたの、なんて言って母上は口元を緩めてたっけ。
……まあ、家と一緒に燃えただろうけど。
「A? どうしたの?」
雷蔵が顔をのぞきこんでくる。
気が付くと、みんなの注目を集めていた。
『あぁいや、少し考え事してたんだ。そうなるとその場合、八左ヱ門にここに待機してもらって___』
この場で説明するのもなんだかはばかられて、私はあいまいに濁して軍議にもどる。
今は夜。燭台に灯された光を頼りに作戦の議論を重ねる。
八左ヱ門と兵助は山賊の根城の偵察でこの場にはいない。
ここで一つ述べておきたいのが、乱太郎きり丸しんべヱは事件に巻き込まれすぎじゃないかということだ。
この軍議を始めるにあたって、山賊の根城の見取り図が欲しいという話になった。
もしかしたらそれで彼女たちの居場所も目星がつけられるかもしれない。
廃寺を根城としている、というのは案外すぐに分かったけど、そこの間取りだとかは誰も知らないわけで。
いっそだれか潜入するか? いやリスクがあるし時間もかかる、でもそれしかなくね? なんて議論をして。
「ワンチャン、一年は組の誰か知らないかな。とくに乱きりしん」
とは勘右衛門の一言。
じゃあ聞きに行くかってなって、乱きりしんにいざ聞いてみたら返ってきたのは
「はい、知ってますよ!」
という元気なお返事で。
「俺たちとうちのからくりコンビが前にそこで遊んでたら、山賊に見つかって」
「その山賊は今は足を洗って、おいしいお団子屋さんを営んでいます!」
そう言うしんべヱはその味を思い出したのか、じゅるりと涎を飲み込んでいた。
ということは今の山賊と乱太郎たちが会った山賊は違うのか。
「あ、兵太夫と三治郎が見取り図描いてたような……」
“まじかよ”
私たちはまったく同じ矢羽音をまったく同じタイミングで飛ばした。
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炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ひぃん暖かいお言葉ありがとうございます!私生活が落ち着きつつあるので、また更新頑張ります!なにとぞお付き合いを…… (2022年4月19日 19時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - これ面白いです!!! 作者さん無理のない範囲で頑張ってください☺️ (2022年4月19日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - れなさん» ありがとうございますっ!!遅くなってしまいすみません_○/|_ そのお言葉が本当に励みになります。やっとこさ私生活が落ち着いてきたので、期待に応えられるよう更新頑張ります。本当にありがとうございます!しょもしょもしてた心の恩人です! (2022年4月19日 18時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高に面白いです、、完結までついていきます!!更新楽しみにしています! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!!あいさんのそのお言葉が栄養分となります。なめさん更新ですが、何卒よろしくお願いします! (2022年1月20日 20時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炭火焼きりんご | 作成日時:2021年4月25日 19時