106話 ソウデスネ ページ18
『ごめんください』
「はぁい」
『あの、おトメさんのお住まいがここら辺だと聞いたのですが、おトメさんはどちらにいらっしゃいますか?』
「…………あの子なら今ここにはいないよ。で、あんたは誰なんだい?」
『あ、これは失礼しました。Aと申します。実は以前、私が怪我したところをおトメさんに助けていただきまして。その時にお借りした手ぬぐいをお返ししたく』
「へぇなるほどねぇ」
『今ここにはいないとは……畑か何かにお出かけなのですか?』
「あぁいや、その……ちと行方が分からなくなっててね。神隠しだって噂さ」
『あら、それはそれは…………実は私の父が奉行所に勤めていますの。なにかお力になれるかもしれません。詳しいことをお伺いしても?』
ええと、と迷いながらもほんの少しの期待をにじませる様子に、私はしめたとここぞとばかりに畳みかける。
詐欺とか恐喝によくある手口である。
良い子のみんな〜!! みんなはこういう手は絶対使っちゃいけないし、騙されないようにね〜!!
そして話始めた彼女に、私は心の中でガッツポーズをする。
『いけない、そうでした。私の父から、あまり父の職の話をしないよう言われてますの。なので私があなたに色々伺ったことは、他言無用にしていただけませんか?』
最後に口止めを忘れずに。
もちろんさ、と彼女はパッと表情を明るくして言う。
軽い挨拶をして別れる。
…………割とおしゃべりだが心が悪という訳ではない人なのだろう。
この前にも何人か話を聞いてきたが、得られた情報量としては彼女が一番多い。
『……そんな目でみないでよ三郎』
「いやぁ……おま……うん」
彼女の視界から完全にでたところで、物陰に隠れていた三郎が顔をだした。
お願いだからそのドン引きと書かれている顔をやめてほしい。だいたい三郎だって似たような手、使ったんだろうし。私も罪悪感刺激されてない訳じゃないし。
「次はいっしょに行くぞ。フッ、せっかくだから夫婦のフリでもするか」
『オッケー。了解』
「……ここは照れたりなんかリアクションするところでは……?」
『え、だって忍務だし』
「あーはいはいソウデスネ」
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炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ひぃん暖かいお言葉ありがとうございます!私生活が落ち着きつつあるので、また更新頑張ります!なにとぞお付き合いを…… (2022年4月19日 19時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - これ面白いです!!! 作者さん無理のない範囲で頑張ってください☺️ (2022年4月19日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - れなさん» ありがとうございますっ!!遅くなってしまいすみません_○/|_ そのお言葉が本当に励みになります。やっとこさ私生活が落ち着いてきたので、期待に応えられるよう更新頑張ります。本当にありがとうございます!しょもしょもしてた心の恩人です! (2022年4月19日 18時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高に面白いです、、完結までついていきます!!更新楽しみにしています! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
炭火焼きりんご(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!!あいさんのそのお言葉が栄養分となります。なめさん更新ですが、何卒よろしくお願いします! (2022年1月20日 20時) (レス) id: a094e8e677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炭火焼きりんご | 作成日時:2021年4月25日 19時