指に触れる愛が、３

・ ページ22

言い逃げかのように切られた電話を見つめ、呆然とする。



柚「Aさん？」
『ねえ…柚ちゃん…結婚してって、ホームラン打ったら結婚してって…言われた…』
柚「！」



柚ちゃんはそれ以上言葉の出ないわたしの背中に手を添えて、じゃあちゃんと見てなきゃですね、と微笑んだ。


試合が始まり、巨人の攻撃。打順が1番の勇人が打席に立つ。
初球でバットを振ったその瞬間、



“ワァァァアア！！！”



誰もがホームランだと分かる、特大アーチを放って、ダイヤモンドをゆっくり周る。



柚「…さすが(笑)」
『…もう、本当に…』



いきなり放たれたホームランに、もう笑うしかない。
ビジョンに映る彼の姿に、あの日と同じように胸がときめいた。



.
.
.



試合後、言われた通り裏口で待っていると、勇人がやって来る。



「ごめん、待ったよな」
『ううん、大丈夫』
「これから行きたいとこあるんやけど、付き合ってくれる？」
『…うん』



そう言う勇人の車に乗り込み、しばらく車を走らせると、そこは、



『わ…凄い…』



東京の夜景が眺められる、誰もいない夜の海。
波の音がだけが聞こえてくる。



「A、」
『ん？』
「これ」
『あ…』

・→←４２. あの日と同じように

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す