指に触れる愛が、

１４. ストーカー事件 ページ33

郵便ポストを開けてため息をつく。


『また…』



2、3日に一回のペースでポストに入れられる明らかに隠し撮りをしたであろう私の写真と、使用済みのゴム。撮影で疲れて帰ってきた私の身体には、それが大きな負担で、最近は夜もよく眠れない。


部屋に帰り、ゴミ箱にそのまま捨て、ため息とともにソファーに沈む。ずっと弟と二人暮らしをしていたこの部屋は、1人でいるには広すぎる。海外移籍が決まって、もう向こうに住まいを移した弟は、しばらく帰ってくる予定もない。


マネージャーである柚ちゃんは、上に掛け合ってくれたみたいだけど、仕事が詰まって、色々な発表を控えてる今は大事にできないことと昔も同じようなことがあってその時は大事には至らなかったから今回も同じだろうということで、現状維持を伝えられた。


今回も、大事に至らないで終わってくれればそれでいいけど、もし、何かあったらと思うと怖くてしょうがない。柚ちゃんは彼氏さんには伝えたらどうかと言っていたけど、シーズン中でほとんど家にいない勇人に伝えたって、余計な心配をかけるだけだと思ってなにも言えていない。


せめて引越しでも出来ればいいんだけど、柚ちゃんが日頃書き込んでる真っ黒なスケジュール帳を見て、そんなわがままも言えない。


無事に、何事もなく、全てが終われば、

それが一番いいのに。

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