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はしゃぎにはしゃいだ海。だが。
「オレ達魔石探すために来たんでしょーがァアアーーー!何みんなして遊んでんスかアアーーー!」
「オマエもだろ」
浮き輪にゴーグル、ビーチボールと装備万端で説得力皆無なアスタに入った団長の蹴りに続き、見事に俺ら全員砂浜に埋められた。それはもう綺麗に一列に並んで。
そして、それ以上に驚愕だったのは。
「「「あ……あのヤミ団長が……めっちゃ真面目に仕事してるうーー!」」」
「テメーらマジで殺すぞ」
そう、あの団長が滅茶苦茶真面目に仕事していたのだ。
俺達がわちゃわちゃやってる間に団長は海底神殿についての情報を手に入れていた。この海の下に海底神殿がある事や、満月の夜のみ海底神殿への道を閉ざす海流が弱まり行けるかもしれないという事。
海の奥から強い魔力を感じる。おそらくそれが、海流を作る魔だろう。
成程……と頷く中、団長はひとつ大きな仕事をノエルに与えた。
水魔法で俺達私海底神殿にまで連れて行け、と。
「え……!?海竜の巣で……!?アレを移動させるなんてよっぽど魔力をコントロール出来ないと……!ムリよそんなの……?誰か──……そうよ、トワだっているじゃない……!だってそんなの失敗したら……」
「そうだな。失敗すれば全員激流にのまれ溺れ死ぬだろう。
で、トワは知っての通り強化やら弱体やらの魔法に特化している。創成魔法に関してはトワよりもノエル、オマエの方が適任だ。
この任務はオレ達だけに課せられた極秘任務だ。オマエがやるんだ」
おおきく見開いたノエルの瞳は団長の言葉に揺れている。それに更に追い討ちをかけるように、団長が一言。
「次の満月まで一週間……それまでに限界超えろ……!」
「………」
返事の声の代わりに、つぅ……と汗が頬を伝った。
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月明かりに照らされた波が光る。岩に囲まれたこの場所では水の音が大きく響いていた。
ラクエに来て初めての夜。今頃、ノエルとサポート役のトワ君は皆を運ぶ魔法の特訓をしている事だろう。少し離れた、まるで切り離されたかのようなこの空間からは二人の姿は見えなかった。
ひとり、しばらく波の音に包まれながら、欠けた月をぼーっと見ていた。
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作者名:白璢 | 作成日時:2022年1月1日 20時