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「!、ゴーシュ先輩にシスター……!?」
アスタの後ろの方に横たわるのは、地を這いずるゴーシュ先輩と、何人かの子供に囲まれた……この場で最も重症であろう者のシスター。真っ白であったはずの修道服は血で染められ、その上から光の刃が幾つも刺されている。
兎に角、怪我人と子供達を避難させなければ……!
「それじゃヤミさん、ハク君!後はお願いしますよ!」
シスターやゴーシュ先輩、子供達。そして回復魔道士であるトワ君と移動の魔法のフィンラル先輩が空間の魔法の中へと消えていく。俺はコクンとひとつ頷いた。が、ヤミ団長は顔を険しいモノにしてフィンラル先輩の方を向いた。
「オイフィンラル、ちゃんと戻って来いよ?」
「ウッ……」
『は?このまま俺達置いてく気だったんですか?』
「いやいやそんな……!」
「オレに歩いて帰れってのか?」
団長の言葉にびくりと身を震わせたフィンラル先輩。
俺は思わずガチな声が出た。団長の顔も怖かった。
と、その時。
「え」
短な声。それに迫り来る、鋭い光線。そして、耳を劈く金属音。
「!」
フィンラル先輩へと放たれた光の魔法。それを"氣"でいち早く察知した団長と俺が、切り裂き弾いたのだ。
これに驚いたようで、光魔法の奴は一瞬目を見開く。それをじろりと睨めば、奴もまた此方を見てきた。……が、どこかそれが、可笑しい。
奴の氣からは、確かな敵意と殺意が感じ取れるのに、俺の方を見る目は柔らかく──どこか、優しかった。それが不気味で仕方なかった。
しかしそれには気付かぬ団長が眉間に皺を寄せて奴を鋭い目で捉える。
「オレのアッシー君に何すんだ……!」
『……テメェ』
剣を構え、吐き捨てる。相手の様子が、俺にだけ感じが違くても奴が敵であることに間違いはない。ならば、俺は奴を殺す勢いで相手にしても、否。しなければならないのだ。
しかし、そんな俺を下がらせたのは、刀を握り奴から目を離さぬようにする団長だった。
「お前も街の方行け。一人でも回復魔道士多い方がいいだろ。
……それに、彼奴……お前に変な氣向けてやがる。今はフィンラルの方着いてけ」
『!、
……分かりました。団長、お願いします』
どうやら彼奴に向けられている"何か"を団長も気付いていたようだ。氣が読める俺達だからこそ、分かったソレ。
今、この場に俺は居ない方が良い。俺もそう判断し、くるりと向きを変えた。
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作者名:白璢 | 作成日時:2022年1月1日 20時