#106 ▼ ページ6
❁
「待って下さい…!ハンジさん!」
「ッ……!!」
─いや、逃げだそうとした、ところだった。
モブリットに腕を掴まれてしまった。
ギリギリのところで部屋の扉に手が届かない。
しかも、これ以上ないくらい真剣に私を見てくるものだから…私も逃げだせなくなってしまった。
「…行かないで、くれませんか?」
「………。」
─なんだい、その声は。
今にも走りだしそうだった足を止めて、その切ない声に胸が張り裂けそうになった。
…ずるいじゃないか。
そんな私に、モブリットは言葉を続けた。
「…急に、驚かせてすみません。
混乱させてしまって、すみません。
それでも…どうか行かないでくれませんか?」
「……わ、わかったよ…。」
「………。
ありがとう、ございます。」
─真っ直ぐにモブリットの顔を見られないまま、俯いたままそう言ったら、モブリットが微笑んだのが横目に見えた。
微笑むモブリットは、いつもよりずっと優しそうだ。
そんなモブリットのことを…知っているのは私だけでいいのに、なんて、思ってしまう私の中に既に答えはある。
なのに私は…ついこの空気に耐えられなくなって茶化すように沈黙を破った。
「…は、はははっ。」
「……ハンジさん?」
「ど、どうしたの?モブリット?
誰かに告白する予行練習〜?」
「…ハ、ハンジさん…?」
「いやぁ〜、妬けちゃうなぁ…。
うんうん、上手くいくといいねぇ!
あっ、私はもちろん応援してるからねッ!」
「………。」
─『はははっ』と笑いながら、彼の背中をバシバシッと叩き、沈黙したモブリットの顔を覗き込んだ。
すると、モブリットは………
「…そ、そんなわけ、ないです。
これは…あなたへの、想い、だったのに……」
「…ッ!!」
モブリットが、な、涙目に…涙目!?
間違いない、目を見開いてモブリットを見つめるが…薄らだけど彼の目には涙のようなものが……。
悲し気な顔で私の顔を見つめていた。
「…う、嘘だよッ!!」
「………え?」
「嘘ッ、うん!嘘!大嘘さッ!
あははッ、まさかモブリットが、泣くなん、て…。
………。
…ごめんね、モブリット。」
─呆然とするモブリットを、その彼の背中を、私は自分の腕の中へと引き寄せた。
ドクンドクン、と、緊張が半端じゃない心臓。
私は震える口を開いて言った。
「…実を言うとね、私も…好きだよ!」
「……は、い……?」
大きく目を見開く彼に、私は微笑む。
❁
79人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時