#144 接吻 ページ44
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怖いのは、あなたじゃなくて私自身。
きっとどんなに卑怯なことをされたとしても、好きでいられる私のことの方が怖いと思う。
それでも…長いキスが終わった後に、今度こそ睨みつけて、『ずるい』と言ったら、私を腕の中に引き寄せるのはもっとずるい。
「他の誰にも触られたくない、なんてな。
…子供みたいな嫉妬で自分が嫌だった。
君に触るのも怖くなったんだ。
何をするか分からない気がして…結局は泣かせたくせに、それも、嫌われるのも怖かった。」
『……バカみたい。』
「…それでも無理だった。
声が聞けないことも触れないことも、結局…仕事ができなくなって自分に腹が立ったよ。
俺は団長ではあるが…Aがいないと、やはり、向いていないらしいな。」
『……本当にバカみたい。』
エルヴィンは私を強く抱きしめて、私の言葉に乾きすぎた笑みを零すから…私は問う。
『…してほしいことはありますか?』
「……名前で呼んでくれるか?」
『…エルヴィンのバカ。』
「……ははっ、ありがとう。」
─こんなことで『ありがとう』なんて言うあなたに、今まで言えなかった言葉を紡いだ。
なんだか恥ずかしいから、その肩に顔は埋めさせてもらっているけれど、それでも。
『…エルヴィンがいい。
私に…触るのも、キスしてくれるのも、抱きしめてくれるのも妬いてくれるのも…全部。
……全部、あなたから…だけが、好き。
それから……』
くすぐったそうにするエルヴィンに、仕返しだと思って構わないで、私はその耳元で言う。
『嫌ってくれって頼まれても、嫌ってあげません。』
ふと見たその耳が赤く染まっていた。
それだけでは飽き足らず、私は、今あなたがどんな顔をしているんだろうかと思って…顔を上げたのに。
らしくない顔して戸惑ったエルヴィンは、迷った目をして、でも、唇をぶつけてきて。
『……っ、ん…ふぁ…っ?』
なんで迷ったんだろう…?
そんな疑問だったことは、戸惑いと、初めての感覚とが重なってから理解した。
息つぎする暇も与えてくれず、私が抵抗することを分かってたみたいに体を離してくれない。
最初は浅かった舌を深く絡められることは、どうしていいか分からなくて、体に力が入らなくなるだけで。
『……こんなの、知らない……。』
「…嫌、だったか?」
唇を離した時に唾液の糸が引いて見えたことが、何も言えなくする理由には十分だった。
首を横に振るしかできないことも。
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時