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「浮かない顔ですね、Aさん?」
─あれから二週間後のことだった。
自室にいたのだが、私はペトラの来訪にも気づかずにぼーっとしていたようだ。
私の顔を覗き込む彼女に慌てて謝る。
『ごめん…えっと、どうかした?』
「特に用はなかったんですけど…最近Aさんが元気ないので、来ちゃいました!」
『えっ……気遣わせてごめんね。』
「もう…謝らないでくださいよ!
それより、どうしたんです?聞きますよ?」
『…えっと……』
あの日から、もう二週間。
断るわけなかったけれど、ハンジはその場でモブリットの言葉に承諾して、簡素な式を一ヶ月後に…ということが決まった。
簡素な式だというから、そんなに手伝うことはなかったが…街にハンジのドレスを見に行ったりして。
準備が進んでいくことは嬉しかったのに、楽しかったのに…その間ずっと気になってたことがある。
「…エルヴィン団長が変?」
『…うん。』
「どんな風に…ですか?」
『…た、例えば、人前なのに、らしくもなく…手を取ってくる……というか。』
「……のろけ、ですか?」
『いやっ、あの……ち、違うよ?
それだけでもらしくなかったのに、その後が変で。』
ペトラは可愛らしく『ふぅー』なんて溜息をつく。
再度私に『どんな風に?』と尋ねた。
『…書類を逆さまに読んでたり。』
「……はい?」
『インクの出ないペンを持ってたり。
珈琲に角砂糖五つも入れたり。
水零したり、あと……
やけに静かだと思ったら、座って寝てたり…。』
「……団長はどうしたんですか?」
『ね、そう思うでしょ!?』
─ペトラは腕を組んでしばらく考え込んだ後、『Aさん』と、私に向き直った。
「…あの、私達他の兵士の前では、いつもと変わらない団長なんですよ。
なので逆に、Aさんの前でだけ変…というのは、何かAさんを意識しているのでは?」
『…な、なるほど!』
「何か心当たりは…?」
『………あったら、悩んでない。』
「でも…本人に聞くのが一番いいんじゃないですか?
ということで、行ってらっしゃい!」
『えっ…今から!?』
「上手くいかなかったら聞いてあげますからっ!
ほらほら、いざ団長室へ!」
─私の自室ではあった筈なのだが、背中を押されて強制退場させられていく私。
しぶしぶ団長室へ向かうのだが、後ろからペトラが囁いた言葉を知らないまま。
「まぁ…Aさん、鈍いですから…。」
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時