#138 公開処刑と拒否権と ページ38
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─もう綺麗な程に日が暮れた帰り道。
エルヴィンが引き寄せた私の腕は、らしくもなく…未だ繋がれたままで歩いていた。
外は寒い筈なのに腕ばかりが温かい。
意識したくなくて、私が沈黙を破った。
『ハンジ…どうしてふてくされてるの?』
そう…ハンジが暗い顔をしているのだ。
ふてくされて、今にも泣きだしそうな顔して、なぜか異常なくらいモブリットから距離を取っている。
「…ッ、聞いておくれよ、A!
私は今日大事なものをなくしてしまった…!!」
『…予備の眼鏡?』
「違う……そうじゃ、ないんだ。
モブリットが…モブリットが、私の親友にキスなんてして私から奪おうとしているッ!!」
『はぁ…!?えっ、それって浮気!?』
「自分はしてませんよ!!?」
「…おい、Aよ。
こんなクソメガネの親友なんざテメェ以外に誰がいるってんだ、なんとかしろ。」
『私はモブリットとそんなことしてないよ?』
「チッ……モブリット、身に覚えはねぇのか?
例えば…今日の昼頃、珈琲屋、とかなぁ。
Aに手ぇ出してんなら…削ぐぞ。」
「モブリット、なんで言ってくれなかったの…?
Aが好きなら、なんで、私を……ッ!」
モブリットはそんな彼女を見て、『え……ハンジ、さん……?』と、カタコトの言葉を出す。
私はハンジの傍に寄ろうとしたが、エルヴィンに腕を引かれて動けなくなった。
『…ど、どうして…?
ハンジも…だよ。
私達がそんなことするわけないのに……。』
「ハンジさん、一体どうしてそう思われているのか説明を……ッ、あっ…。」
『……あっ?』
「……あっ?」
私の声と、涙ぐんだハンジの声が重なる。
モブリットは立ち止まって考える仕草をした後、『そういえば…』と呟いた。
「自分、珈琲屋でAさんにぶつかりましたね。
つい身を乗りだしてしまって…額が。」
「……えっ?」
「……は?」
「……あ?」
『…あの時モブリットは『ハンジと結婚したら?』って、私の提案に身を乗りだしただけなのにね。』
─途端、『ええええええッ!!?』ってハンジの声が響いて、街行く人からの視線が集まる。
焦るモブリットに私は言葉を続けた。
『ねぇ、モブリット、もうこんな関係やめよう?』
「ちょッ、公開処刑ですか!!?」
『さぁさぁ、私達は先に帰ろう!』
─真っ赤になったモブリットとハンジを取り残し、私は空いた手でリヴァイの腕を引いたとさ。
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時