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「つい先日、リヴァイ兵士長とエルヴィン団長がここにお見えになってたんです。」
─落ち着かずもぞもぞと動いていた私だったが、そんなロイさんの言葉でピタリと動きを止めた。
『エル……じゃなかった。
団長とリヴァイが…ですか……?』
「エルヴィン団長が梅花黄蓮の栞を手にして、意味を知らないかって…尋ねられました。
『二度目の恋』だって、お伝えしました。」
『……二人が出かけた先、ここだったんですね。』
ロイさんは私の体を強く抱きしめて、自嘲気味に笑うみたいに、掠れた声で呟いた。
「…ただ、あなたに会えたら幸せだった筈なのに。
あの日エルヴィン団長が帰られる時、出会った頃のAさんと同じことを言いました。
『素敵な名前だな』…って。
こんな運命もあるのかなって、思いました。」
『……さっきの、ロイさんのお話、やっぱり、私のこと……だったんですね。』
「…そうですね。
僕の中ではあなたは恩人で、唯一、きっとこれからも好きでいられる女性です。
だから…Aさんが好きな人と一緒にいられるのなら、けじめが、要りました。」
─最後に、もっと強く、抱きしめられた。
なんだかその時、私を離したロイさんを見て……ようやく気づけたことがあった。
リヴァイが悲しそうな顔で、以前から私に近づいては離れていったのも…きっと案じてくれていたんだ。
『…今でも、私、ロイさんに好かれる女の子はきっと幸せ者だって…思います。
でも……ごめんなさい。
あなたが私を想ってくれるのと同じ…くらいに、私にも好きな人がいるんです。』
「…はい。知ってますよ。
ただ、ゼラニウムは受け取ってくれますか?
僕がAさんといられて幸せ者だったことは、あなたにも知っていてほしいんです。」
『それは……もちろん、ですよ?』
「…やっぱり優しいですね、Aさん。」
─それは、あなたの方だ、と、思った。
ただ微笑んで、『幸せになってくださいね』なんて、こんな私に言ってくれるのだから。
そしてそんな彼は、『あぁ…どうやら僕、やらかしましたね』と、私を見て唐突に呟く。
『なんのことですか…?』
「兵舎まで送りたかったですが…必要ないですね。
お迎えですよ、Aさん。」
─ロイさんの目線の先を辿る。
bouquetの外に、私が大好きな人と不器用な我が班の班長と、結婚を控えた筈の二人の困った姿。
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時