#133 ▽ ページ33
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「…あの、店主さん。」
「はい?なんなりと!」
「苺にも、花言葉ってあるんですか?」
そうほんのりと聞いたモブリットは、もう、この苺の花が気に入ったみたいでした。
ロイさんも優しく答える。
「もちろんですよ?
花言葉は、『尊重と愛情』に『幸福な家庭』。
『先見の明』…『あなたは私を喜ばせる』です。
モブリットさん…お気に召しました?」
「…ッ、ははっ。」
『…『気に入った』って顔に書いてある!
なんだか二人に似合ってる。
いい花が…見つかってよかった。』
「お陰様で……ありがとうございます!」
モブリットの安堵したような顔。
それにしても、事前に苺の花言葉を知っていたわけでもないのに…惹かれて選んだものが、まるで運命だったみたいだ。
─気づけばもう夕方になってた。
ロイさんは『じゃあこれ、包みますね!』って、すっかりモブリットと打ち解けて…嬉しそう。
なんだか少し考え込んじゃった私に、モブリットが『Aさん…?』って不思議な顔をした。
『例えばの話だけど…もし、二人が運命でもそうじゃなくても…私は心から祝福する。
…ん、でも、変なことを言っちゃったや。』
「Aさん……?」
『ごめんね、聞き流して?』
私がそう言って目を伏せると、『できましたよ!』って、ロイさんの明るい声がした。
その手には苺とそうでない花があって、苺はモブリットの手に…もう一つの花はロイさんの手の中のまま。
そして、唐突に穏やかな声で言いました。
「…僕は、思ってました。
運命なんてきっと存在しないんだって。
でも……もう四年も前ですね、壁が壊された時に、唐突に運命があるように思えたんです。」
『……ロイさん。』
「全ての日常が破壊された時に…やっと、僕達は残酷な箱庭の住人なんだって思いました。」
「………。」
─ただ、静かに耳を傾けていた。
「…でも、変わったんです。
例えば…ある日僕が開いたお店に来てくれたある人は兵士で、いつも笑ってました。
でも、壁外調査から帰還したある日のこと、今にも死んでしまいそうな目で花を見て。
次の壁外調査の前日は、祈るように。」
『……え……?』
「僕は…救われました。
この狭い箱庭の中でも、縋って、抗うのは…誰にでもできることじゃないかもしれません。
でも、その人がある方と一緒になれた時は、こんな運命もあるんだなって…思いました。」
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時