#120 私の心臓 ページ20
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「…A。」
『なに?エルヴィン。』
「聞いてもいいかい?」
『うん、どうぞ?』
─青くなった空の下。
エルヴィンが私の手に自分の手を重ねて、私はその手にどうしようもなく嬉しさを感じた。
エルヴィンは私に問いかけた。
「私の……恋人になってくれますか?」
笑ってしまいそうになる。
こんなに好きなのに、その好きな人は、未だに少し不安そうな顔をしているものだから。
答えなんて一つしかないっていうのにね。
『……はい。』
私は微笑んで言葉を返した。
『…私も聞いていい?』
「あぁ、いいよ。」
『エルヴィンは…私でいいの?』
「…Aじゃないと、お断りだな。」
『……ふふっ、嬉しい。』
「きっと…私は団長には向いていない。」
『…奇遇だね。
私も兵士には向いていないかもしれない。』
つい顔を見合わせて、笑った。
エルヴィンは『なぜ?』と、私も『どうして?』と、それぞれ言葉を投げかける。
『Aからだ』と言われ、私は口を開いた。
『…心臓、何に捧げたのか分からないの。
エルヴィンといると常に心臓の危機だよ。』
「……それは困ったな。」
『だから…兵士には向いていない。
捧げた筈の心臓が返ってきちゃったよ。』
そう冗談を言うと、クスクスと笑う。
とてもあのお堅いエルヴィン団長だとは思えない、イタズラっ子みたいな可愛い笑みで。
そんな一面を知っていることが、嬉しい。
そんな一面を知っているのが…私だけでいいのにな。
『ほら…エルヴィンの番だよ?』
「私も…Aといると常に心臓の危機だ。
Aのことばかり考えて、兵士どころじゃない。
仕事どころでも、団長どころでも。」
『あははっ…似た者同士かな。』
「…そうだな。」
『…ねぇ、エルヴィン団長。』
「なんだい、A。」
『…この心臓は、あなたに捧げてもいいですか?』
─でも、既にあなたに捧げてしまった心臓。
それでも問いかけるのは、ちょっとしたイタズラで、最後の確認で、ほんの本気の言葉でもあって。
エルヴィンはおかしなものを見つけたみたいに、さっきのリヴァイみたいに屈託なく笑った。
「私は…既にAに心臓を捧げた。」
『…私も、実はもう捧げてる。』
「大事に預からないとな。」
『私も大切に預かるね。』
私が言い終わると同時に、唇が塞がれる。
心臓を捧げて貰ったものは、同じく一つしかない心臓と、初めての彼からの口づけでした。
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時