#117 温度 ページ17
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『…なーんて、言われちゃったよ。』
「……そう、か。」
『リヴァイ、あれで結構優しいんだよね。』
「……そうだな。」
─エルヴィンが困ったように笑った。
私はそんなエルヴィンに、リヴァイが認めてくれた想いの相手に、更に困らせるような言葉を伝える。
『…ごめんね、エルヴィン。
私、まだしばらくエルヴィンが好きだよ。』
「……A。」
『忘れるのにも時間がかかるだろうし、忘れようとするにも…まだ時間が足りないかな。
だから…まだ終わらせられそうにないや。』
「…A、聞いてもいいかい?」
『うん、どうぞ?』
「私には…昔から好きな女性がいる。」
『うん、知ってるよ?』
「……誰、だと?」
『…え?マリーさん。』
私が言うと、エルヴィンは『はぁ』と溜息。
それはそれは深い溜息でしたとさ。
首を傾げる私に、苦笑いしながら言葉を続ける。
「…違うよ。」
『……え?』
「…マリーじゃない。」
『え…な、なんで?』
「なんでもなにも……ここにいるからな。」
『……えっ?どこ?』
「………はぁ。」
え、待って、マリーさんじゃない?
…どういうことだろうか?
─なんて頭をフル回転している私に、エルヴィンは今までで一番深い溜息をついて、また苦笑い。
『……?エルヴィン?』
「…Aは、本当に鈍いな。」
『大丈夫、エルヴィンも鈍いよ。』
「…ははは。」
そして、私をじっと見つめた。
顔に熱が集中して忙しない私を見つめて、『ここにいるんだがな……』と、どこか切ない声。
ちょっと待って、勘違いしそう。
そういう切ない顔は反則じゃないか!
そんなうるさい心臓の音と私の心の声を遮るように、エルヴィンは微笑んで私に言った。
「私が好きなのは…Aなんだが?」
『……ッ、え……?』
「私は、Aのことが好きだ。」
『……ッ!?』
─幻聴?それとも夢?幻?
何も言えなくなる私は立ちつくした。
だが夢にしては、頬が熱すぎる。
夢にしては、心臓がうるさくて速すぎる。
「…A?」
『……えっと、夢……?』
「夢ではなく、本当のことだ。」
静かな庭に、夕暮れ時に、エルヴィンの声が響く。
鮮明な夢なら、どうか覚めないで。
どうせならもう少し、夢を見ていたい。
『……ッ……。』
─力が抜けて、その場に座り込んだ。
そんな私にエルヴィンが差し出す手に、自分の手を重ねてみると、夢にしてはやけに温かい。
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時